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「……なんだ、コレ?」
靴箱の中には上履き以外の物が入っていた。
それは封をされた手紙だった。
「何々…『卒業式の日に伝えたい事があります。朝の七時に星桜の樹で待ってます』…か………」
星桜の樹というのは、陵桜高校が建てられた時からある桜の樹で、曰く宇宙人がそこにUFOを隠してるだの、
枯れてるはずなのに花が咲いただの、不思議な噂がある木で、そこで告白したカップルはそれこそ星の数ほどいるとはこなたの言葉だ。
って、そんなことよりも手紙の中身だ
さすがにこれがラブレターっていう事は、そこらへんに少しだけ疎いオレでも分かる。
ただ問題は………。
「誰だよ………」
手紙の方にも、封の方にも名前が書いていない。しかもデザインは両方こういうのには似つかわしくないシンプルな白、
おまけに文字もワープロのため、男か女か判別不能。
「イタズラか?」
その可能性は大いにある。白石辺りがこういうことしそうだ。
ただそれ以外に、オレの頭では1人の少女の姿が浮かぶ。
元々ここの世界ではないオレを受け入れて、あっちの世界でのオレの業を知ってるにも関わらず、変わらずオレと付き合ってくれている。
何度あいつに励まされて、助けられたのだろう。気が付くとそんなアイツにオレは惹かれていた。
だがそれはただのオレの夢想だ。あいつにはオレみたいなやつよりもっと相応しいやつがいるはずだ。
そう……オレなんかよりも………。
そう言い聞かせたが、オレの頭の少女は消える事なく微笑んでいた。
「おーすっ」
「シンちゃん、どうしたの?」
「うをおっ!」
いきなり声をかけられてオレはあやうく手紙を落としかけた。