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「た、確かにここに呼び出したのは私だけど、で、でも名前書いてなかったのよ?

 いたずらとか考えなかったの!?」

 私は息を落ち着かせてあいつに尋ねるものの、その声は完全に上ずっていた。

 そうなるのも仕方がなかった。あいつは来ないと思ってた。でもそれなのにあいつは今私の目の前にいる。わけ分かんない………。

 ひょっとしてあいつの事だから、手紙の本当の意味が分かってないんじゃ………。



「考えたさ、だけどお前が来るかもって思ったら、そんなことどうでもよくなってさ」

 そう言ってあいつは再び笑う。

 その笑みはとっても優しげで私は頭がぼーっとしてくる…って………

「ち、ちょっと、待って!」

 私はさっきのあいつの言葉を脳内で反芻する。

 普通に考えたらさっきのあいつの言葉って………。



「……ねえ、それって………」

「……かがみ、好きだ」

 少しのためらいの後、あいつの出した言葉の意味を理解するのに私は刹那の時を要した。

 だってあいつはそんな素振り今まで全く見せなかったし、正直フラれるのも覚悟してた。



「……いつから………?」

 予想外の出来事が続いたため、私は呟くように尋ねるのがやっとだった。

「今年に入ってからかな? ……気付いたらかがみの事ばかりに目がいってさ」

「……言わなかったのは私達が受験生だったから?」

 恐らく告白されてしまえば、私は舞い上がって受験どころではなかっただろう、

だからそれを見越して言わなかったのはあいつの優しさだろうか?



「それもあるけど…何より自信がなかった、お前を、かがみを守る自信が………」

 そう言うと今までの優しかった笑みが消え、あいつは下を向く。

 見るとあいつの手は震えていた。





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