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自分がなぜ、走っているか分からない。
正確な時間は分からないが、まだ約束の時間までには十分あるはずだ。
それなのに私は走る事を止めれなかった。
そして見えてくる約束の場所、『星桜の樹』。
「はぁはぁはぁ………」
私は星桜の樹が見えると進む速度を緩める。周りには人影らしきものはない。
やはりあいつは来てはいないのだろうか?
来るはずがない。あんな名前を書いてないものに………。
一年半の貯めた勇気を振り絞って、手紙を出したのに、結果が自分のミスで全てパァだ。
次に告白を決心できるのはいつになるんだろう? その時にはもうあいつは届かないかもしれないのに………。
そう思いつつ、実はあいつは私の読んでるラノベの主人公みたいに迷彩色の服を着て、この場の様子を伺ってるかもしれない。
と考えてる自分は本当に救いようがない愚か者だ。
そして私は星桜の樹の根元に着く。が、あいつの姿はどこにもない
世の中はそんなもの、分かってはいた。言葉でちゃんと伝えないと分からない、
分かってはいるつもりだった…でもどこかで期待をしていた………。
「……やっぱり、いな――きゃっ!?」
私の目から涙が落ちる前に星桜の樹から何かが落ちてきた。
それは人だった。幻でもなく、妄想でもない。
でもここにいるはずがない人、あいつだった。
「な、な、んで………?」
「なんではないだろ?そっちが呼びだしたんだし」
私の呟きにあいつは笑いながら答えた。