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「なんでよー?
そもそもあんたがこっちの世界に来たのも凄い偶然じゃないのよ」
「かがみもういい、もういいんだ………。」
「……シン」
「分かってるんだろ? オレはただのアニメキャラだ
作られた、決まった感情しかないんだ。
そんなオレがこの先も、ずっと先もお前の気持ちに答えられると思うか? 無理だろ。」
オレの言葉を聞くと、納得したのかかがみは目を下げ全身を震わせる。
本当はかがみにこんな想いをさせたくはなかった。
でもこれはどうあがいても変えられない事だから、早めに決着を着けるべきなんだ。
オレがかがみの貴重な未来を奪いたくはない。
「いつまでも、いつまでもふざけんなぁぁ!!!」
しかし予想と違いかがみは怒声を発し、オレを真っ直ぐ見てきた。
「あんたはアニメのキャラじゃない! ちゃんとした私と一緒の人間よ!!」
「かがみ。」
「あの映像の中じゃあの少女が亡くなった後すぐに場面が進んでいったけど、違うでしょ!?
あんたはきっと、あの何倍、何十倍の時間落ち込んでた、そうでしょ!?」
「そ、そりゃ………。」
艦の皆からはオレがそういう事されるのが嫌いって知っていても、これでもかと言うくらいに心配された。
それはさっき見ていたものには流れなかった光景。
「あの子が亡くなった時、あんたの感情はあんな映像で表現できるくらいのもんだったの!? 違うわよね!?」
「…………。」
あんな憎悪と憤怒にまみれた感情は多分今後生まれないだろう
でも、あの時の感情は今もオレの中にある、忘れれるはずがない
「人間は場面の区切りで生きてないわよ! ちゃんと一日、一時間、一分、一秒を体感
しながら生きてる!
あの映像の場面の間、間にも、あんたはちゃんと記憶がある、そうでしょ!?」
「…………」
「あんたが恩人だった人を手に掛けた動揺と衝撃、これはたった今生まれた感情でしょ!?」
「なんでそんな事が分かるんだよ!」
「分かるわよ! 人だったら当たり前でしょ!?
そして私はそれがどれほどのシンの心に傷を付けたか分からない!
だって人間だもん! 別の人の感情を全部分かるわけないじゃない!
じゃあ、あんたは私と同じじゃない!? ただ生まれた世界が違うだけ!!」
「で、でも………」
何を言うつもりだったかは分からなかったけど、オレの言葉は途中でかがみの唇に遮られた。