「だからなんだよ?」



 目の前にあるのに決して届かない。



 不愉快な状態にオレはついに声を荒げた。



「多分これ覚えてるの私だけ、つかさは絶対忘れてる」

「かがみ、いい加減にしろよ! 何が言いたいんだ!?」



 頼むからそんな嬉しそうな顔をしないでくれ。



 オレにそんな顔を向けないでくれ。



 作り物の存在のオレには、あんたに届かないんだ。



「つまり大事なのは人の中にあるって事。でもおぼろげになるからそれを呼び覚ます為に映像なんてのがある

 あれも一緒でしょ?」

 かがみは山積みになってるDVDを指す。

「あれも、あんたの記録の一部、それだけでしょ?」

「ハァ、何言ってんだよ!? どう見てもおかしいだろ!?

 だったらなんでオレの記録が勝手に世間に出回ってるんだよ!?」

「そんなの分からないけど………

 案外あのアニメを考えた人とあんたの人生の一部が偶然重なっただけとかそんなんじゃないの?」

「そんな訳ないだろうが!?」



 ようやくかがみの意図が分かった。

 かがみはオレを励まそうとわざわざ自分の昔の映像を見せた。

 かがみの好意は嬉しい。

 実在しない、架空のモノであるオレを否定もせずに、いつもみたいに接してくれる。



 でもやっぱり。



 無理だ。





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