まるで現実味がなかった。

 足場のない空間を歩いている、そんな感じだった。

 いつもならそんなのは気持ち悪いと切り捨てるのだけど、今日ばかりは違った。



 とても心地良い、いい気分だ



 理由は分からない



 ただその理由はきっとかがみにあるのだろう



 かがみの水着姿は正直言って、美しかった。



 スレンダーでありながら、出ているところはちゃんと出ている。

 お世辞抜きのナイスプロポーションといえる。



 ただそれより嬉しかったのは、かがみがオレの為にそのプロポーションを形成し、維持しているという事だった。



 本人は良く嘆いているけど、かがみは普通にしていても体型は悪くない、それなのにオレを喜ばせようとプロポーションに磨きを掛けている。

 媚びようとか外面を良く見せようとか、そんな薄っぺらいものじゃない

 自分に出来る事を最大限にしようと努力する、それがかがみという女性

 オレが惚れた女だ



 オレみたいな人の心に鈍感な奴でもそれが分かるんだから、そこらの男にもきっと分かるはずだ、かがみの魅力が

 その上、夏の海原なんてナンパのメッカだ。

 ちゃんとかがみの心がオレを向いてくれるように努力しなければならない



「ん」

 だから、オレは普段はしない人前で手を繋ぐという行為に出た。

 これはどんな事があってもかがみを守るという改めての意思表示



「あ、ありがとう………」

 オレの意思が伝わったのかかがみは顔を朱に染めて



 そして





 なんとかがみは手を繋ごうとするオレの手を一旦離し、自分から指を絡ませてくる

 いつものかがみなら人前では絶対にしない行為



 どうなってる?



 今日のかがみはおかしいぞ



 だけどそんな疑惑も、オレの胸の高鳴りの前には些細なものでしかなかった。





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