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「失敗したー」
宿に着き、海原に出る準備をしていた私は溜め息を付く。
手にはこの日の為に買った新しい水着。
雑誌とかで着ているアイドルの水着に比べると露出は少ないものの、立派にビキニと区別されるもの。
「なんでこんなの買ったんだろ………」
確かに数年前の高校時代の水着のみならず、
去年の水着すらバストとヒップははきついわ、ウエストはゆるゆるだわでまるで役に立たないものにはなっていたけど………
それでも同じ様なデザインの水着を買えば良かったのだ
それなのにこなたの妄言に頷いてしまったのは迂闊としか言いようがない
「何がこれを来たらシンも喜ぶ、よ!」
その時はそれもそうだと喜んだものだけど、今考えるとデメリットの方が遥かに多い。
自分に似合っているのか
シンにみっともないと思われやしないか
それだけならまだしも、身の程をわきまえない彼女という事でシンに恥をかかせてしまうのではないか
私だけならまだしも、シンが馬鹿にされるのなんて耐えられない
とはいえ私はこの水着しか持ってきていない。
「かがみ、そろそろいいか?」
扉越しにシンが聞いてくる。
もう逃げ場なんてない
覚悟を決めるしかない
「ど、どう? ………」
仕方なく水着を着て、シンを部屋に招き入れる。
小声になっているのは自分も認めるところ。
最早私は、まな板の上の鯉。
「……似合ってる………、というか凄い綺麗だ………」
しかし予想に反してシンは顔を赤らめ、明後日を向きながらそう呟いた。
「あ、ありがとう………」
その様子からシンが本心で答えてくれたのが分かり、私も顔を真っ赤にし、下を向きながら答える。
おかしい
いつものシンなら、そんな事は決して言わない、もし似合っていたとしても軽口を飛ばすはずなのに………
ぱさぁ
「こ、これを着てくれ、他の男に目を付けられたら大変だから………」
私にパーカーを羽織らせ、シンは赤い顔のまま小さい声で言ってくる。
でも悪い気持ちじゃなかった
「うん!」
むしろとっても嬉しかった