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「……お姉ちゃん、泣いてないけど泣いてた」
「…はい………」
かがみさんが教室を出ていかれた後、ぽつりと呟かれるつかささんに頷く事しか出来ない私。
辛いです。かがみさんの気持ちが痛いほど解るから………。
でも何故でしょう。かがみさんは先ほどの様に、自分より相手の事を考えられる素晴らしい女性です。
そんな女性を、何故あの方は………。
「どうしたのこなちゃん? さっきから黙って」
そんな事を考えている間に、つかささんが難しい顔をなさっている泉さんに声を掛けられました。
「……かがみ、知らなかったのかな?」
「なにを?」
「いや、あのさ――」
「バレンタインの次の日に? そんなの聞いたことないよ〜」
「うそっ!? これってオフィシャル設定じゃないの?」
私もバレンタインについて調べた事がありますが、そんな話は聞いた事もありません。
しかも私だけならまだしも、かがみさんやつかささんも御存じないと言う事は………。
「恐らくその決まりは地域毎の風習みたいなもので、正式な日本のバレンタインの決まりではないかと思います」
「ちょっ、マジ!? ……ということは…シンが絶交宣言されたと思ってるのは誤解で」
「かがみさんがフラれたと思ってるのも誤解だという事は………」
「ど、どんだけぇ〜」
なんという偶然が重なった誤解なんでしょう!
……ですが、これで原因は分かったのですから、御二人を仲直りさせる事が出来るはずです。
「問題はどのようにして御二人の誤解を解くか、ですね」
「今回はわたしの責任だよ! わたしが二人に話して誤解を解くよ!」
「で、でもこなちゃんが誤解って言っても、二人共慰められてるだけって思わないかな?」
「うぐっ、た、確かに…こういう時ダブルツンデレってやっかいだね………」
「やはり、お互いの口から誤解という事を伝えてもらうのが一番良い方法かと」
「でも、どうやって?」
「みゆきさん何か作戦でもあるの?」
「はい、こうして―――
どうでしょうか?」
「ゆきちゃん、頭イイ! それならイケるかも!」
「さすがはみゆきさん! 作戦名は『Rotten Xmas cake』ってとこだね☆」
「さすがに、それは………」
しかし私達に出来るのはお膳立てまでです。
後は御二人の…絆を信じるしかありません。 私は一方的に言うと、逃げる様に教室を出ていった。