ようやく四時間目の終了の鐘が鳴った。

 高校生活二年間でこれほど昼休みを待った日はなかった。

 そして、これほど昼休みが来てほしくない日もなかった。

 朝からずっと私はあいつが取った行動を考えていた。

 メールでそれを聞こうとも思ったが、答えが返って来るのが怖かった。



 そして朝から考えて出た結論が、あの行動は偶々であるという事だった。

 偶々あいつがお腹が痛くて顔が青かったから

 偶々あいつが幽霊を見て青ざめてたから

 詳しい理由はわからないが偶々そうなったのだ。

 そう自分に言い聞かせながら、あいつのいる教室に向かう。



 教室に入るとあいつがバツが悪そうに照れながら

『朝は悪い。実は………』

 と言ってくれるはずだ。

 そう願い、私は教室のドアを開けいつもの席を見る。

 そこにいるのは私の唯一の妹と二人の親友。……そしてあいつは何処にもいなかった。





『…………』

 つかさ・こなた・みゆき、そして私の四人は昼食を無言で食べていた。

 これは私たち四人がケンカしてるわけではない。

 無論四人で食べるのが初めてというわけでもない。一年前まではこの四人で普通に昼食を食べていたのだから………。

 原因は……恐らく私。



「……ねぇ、お姉ちゃん?」

「なにつかさ? 教科書忘れたの?」

 空気に耐えられなくなったのか、つかさが私に話しかけてくる。私は平静を装い、普通にいつも通り返す。

「シンちゃんと何かあったの?」

「ぐっ………」

 ……まさか、直球勝負で来るなんて…つ、つかさらしいけど………。



「……よ、よく、分かったわね………」

「そりゃわかるよ〜。かがみさっきからずっと遠い目してるもん」

「それにシンさんも、授業中溜め息ばかりなさって、昼休みが始まると脱兎の様に教室から出て行かれましたし………」

 私の呟きをつかさに変わってこなたとみゆきが答える。

 私を見る三人の目は『理由を話せ』と促している。

「……仕方ないか………」

 私は三人の圧力に観念し呟いた。

「……実はね…私……ちゃったの………」

「かがみ、全然聞こえないよ〜」

「……だから…私……シンに、フラれちゃったのよ………」

『ええーっ!?』

「あ、あんた達、声が大きいって!!」

「す、すみません! ……と、という事はかがみさんは告白されたのですか?」

「今日の朝にね――」

 そう言って私は朝の事を三人に話した。



「……それって、告白になるのかな?」

「シンさんはそれ位では気付かれないかと………」

「ハハッ! どうだろ? 私、顔にわりかし出やすいから気付いたんじゃない?」

 つかさとみゆきの疑問に笑って返す私。

 不安なのだ。……そうしておかないと、自分がどうにかなりそうで………。

「……だから、アンタ達とご飯食べるのも今日で最後」

「えっ?」

「そんな!?」

「私がここに来たら…あいつ一人でご飯を食べる事になるじゃない?

 ……私は同じクラスにも友達いるけど、あいつの友達はあんた達しかいないしさ………」

 私はもうあいつの友達じゃない。でもあいつには転校してきた時のような寂しい顔はしないでほしい。

 ……おかしいわよね、フラれた相手の心配するなんて………。

「そういうわけだから、あいつに伝えといてね」



 私は一方的に言うと、逃げる様に教室を出ていった。







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