「さっき言ってた義理チョコってやつ? つかさやみゆきさんもそれなのか………?」

「それはないよ〜。その二人は本命チョコだよ。ラッピングからして専用機だもん♪」

「そ、そうか?」

「そうだよ〜。あ〜ひょっとして、ほっとした?」

「す、するか!! 馬鹿な事言うな!! オ、オレはべ、別に義理でも良かったんだからな!!」

 でも自分がその二人から大切に思われてるのはやっぱり嬉しい。

 まあこんな事口が裂けても、言えないけどな。



「はいはい、そういうことにしておくよ♪」

 ニヤニヤした顔でオレの反論を受け流すこなた。

 クソッー! あの顔は絶対におちょくってるな。何か反撃したいけど…そうだ!

「こなたは義理チョコもくれないんだよな………」

 オレはいかにも残念そうな声で言い、うなだれる。

「まあわたしはお菓子作りは得意じゃないからね。でもかわりに今日の晩御飯は腕を振うよ〜☆」

「ホントか!?」

 こなたの返しにあっさりオレのターン終了。

 ……ってオレひょっとしてメチャメチャ単純?

 こうしてこの世界で初めてのバレンタインは豪華な夕食で終わった。





『チョコをバレンタインの次の日に渡すと渡した人の事が嫌いっていうことなんだよ〜』



 昨日のこなたの言葉とかがみの朝の行動がオレの頭にこびりついて離れなくて、授業は完全に上の空。

 かがみとは、出会ってからたくさん喧嘩をした。

だけどそれはお互い自分の事を相手にもっと理解して欲しくてやっていると思っていたのはオレだけの勘違いだったらしい。

 しかし

「そんなに嫌われてたなんてなー」

 思わず溜め息と共に小さく何度目かの独り言を吐き出す。



 オレを嫌うのは分かる。

 自分で言うのもなんだが、オレは人付き合いというのが上手くない。恐らく知らない内にかがみを傷つけていたんだろう。

 分からないのはそんなに嫌いなのに、かがみはオレに話しかけて笑いかけてくれるという事だ。

 そしてもう一つ分からない事がある。

 今後かがみとどう接していいかという事だ。

 これらの問いの答えを朝から考えているんだけど、まったく出てこない。

 取りあえずに出た答えが、嫌いなヤツとは飯を食べたくないだろう、だった。

 その結論にようやく辿り着いた時―――



 キーンコーンカーンコーン♪





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