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「いや〜勝利、勝利、大勝利!」
「何が大勝利よ、ぎりぎり優勝だったじゃない」
私達がいるチームは見事優勝を果たした。
もちろん、私とあいつの二人三脚はぶっちぎりの一位、あまりの早さにリレーの最終走者を差し置いて、MVPに輝くほどだ。
「こなた、確か二人三脚は大した事なかったんだよなー?」
「うっ……すみません、わたくしが間違っておりましたー!!」
「ですが、泉さんの力走がありませんでしたら、優勝もなかったですし」
「うん、みんな頑張ったよね!」
確かに二位のチームとの最終点差は四点差、私達が二人三脚で一位を取っても、リレーが一位を取らなかったら、優勝もなかった。
そのリレー一位もつかさのお弁当がなかったら、取れていたかどうか
「まあ、そうね」
だから私は二人の言葉に頷く。
「じゃあ、行こうか?」
「うん」
「ちょ、ちょっと、どこ行く気よ?」
「打ち上げだよ、もう店は予約してるし」
「かがみさんのクラスも打ち上げをするのでは?」
そういえば、日下部の変わりに峰岸がそんな仕事を受け持ってた気がする。
という事は………
「ほら、シン行こ」
「だから引っ張るな」
「お姉ちゃん、また後でねー」
「それでは失礼します」
あいつはあくまでも助っ人扱い、本来はB組なんだもんね
すっかり忘れてた
でもいいの?
このまま行かせて?
優勝の余韻から一転して、私は胸を締め付けられる感覚に囚われる。
だってあいつと私はこの体育祭ではパートナーだったのよ
毎朝、毎朝練習して、転んで、悩んで、一緒に走って、ゴールテープ切って
それで最後の最後でこれ?
いや
絶対にイヤ!!!
「ち、ちょっと待ちなさいよ!!」
私は力の限りあいつの手を引っ張る。
「うをっ!?」
「きゃっ!?」
こなたの方は対して力を入れてなかったのだろう。
あいつは私の方へと引っ張られ、私はというと勢い余って後ろに倒れそうになる。
「かがみ!」
だけどあいつは持ち前の運動神経で体勢を整え、腕を自分のほうへ引き寄せる。
私はあいつの腕に抱きつく格好となった。