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『右、左、右、左、右、左………』
オレとかがみはリズムを口で合わせながら、進んでいく。
そして
「ゴール! やったね、シンちゃん、お姉ちゃん!!」
つかさの言葉に俺達二人とも笑顔がなかった。
なんてったってただ歩いてゴールをしただけなのだから。
「こなた、今ので勝てそうな確率は?」
「運が良かったら、ブービー狙えるくらい」
「だよな」
「で、ですが、格段の進歩ですよ」
『…………』
みゆきの励ましの言葉が痛い。
確かに転ばずにゴール出来たのはたいした進歩だとは思う。
だがこれが出来た段階で体育祭は明日にもう迫っていた。
1週間、早朝訓練をしてようやく歩いて完走。
1着を狙うには圧倒的に時間が足りなかった。
「でも、やるしかないわよね」
「ああ」
言葉だけ聞けばまだ希望を失っていない様に聞こえるけど、実際は違う。
オレもかがみも相当に焦っている。いや、諦めかけていると言っていい。
「悪い、もう1回だけ付き合ってくれ」
「うん、いいよ」
「わたしもおkだよ〜」
「一回と言わず何度でも手伝わさせていただきます」
「ごめんね、ありがとう」
それでも止めないのは、なんとしても否定したかったから。
オレとかがみの今まで築き上げてきたものが表面的なものじゃないって事を。
だけど、現実はそんな言葉だけじゃ覆せない。
そもそもこんな精神的に追い詰められている状態で、いい結果が付いてきた試しがない。
「はぁはぁ」
「はぁはぁはぁはぁ」
オレ達2人は地面に仰向けに倒れ伏す。
タイムはなんにも変わっちゃいない。
いつもならこれくらいの運動でへたばったりするような事はない。
だが、絶望感が疲労を膨らませてくる。
ダメなのか