「でなんで、あんたなわけ?」

 放課後、パートナーに挨拶に、とC組に来たオレに大層な歓迎の言葉をくれたのはかがみだった。



「仕方ないだろ、全部ジャンケンで負けたんだからさ」

「あんた運悪すぎ」

「うるさい!」

 人が気にしてる事を………、しかしさすがにジャンケン5連敗とは………。



「どうせ、パルマばっか出して負けたんでしょ?」

「うっ………、いや、まあ………、ってそんな事はいいだろ! そっちの余ってるヤツは誰だよ?」

「余ってるって言うな!」

「なんだよ、そうだろうが!? ……まさか、オレの二人三脚の相手って………」

「私」

 それだけ言うと、かがみは明後日の方向を向いた。





 どうせ運動が出来ないやつが残ってるだろう、と憂鬱になっていたから、相手がかがみは意外でもあり、頼もしくもあった。

 かがみなら運動能力も高いし、勝つのに全力を尽くす。

 それに何よりお互いの事もよく知ってるし、コンビネーションという面でも不安はない。

 こりゃ楽勝だな



「何考えてんの?」

「いや、お前がパートナーだとオレ生きて帰れるかな〜と思ってさ」

 もっともそんな事は恥ずかしくて口にはとても出せないんだけどさ。

「何? 狂暴とでも言いたいの?」

「別に、オレはそんな事一言も言ってないだろ」

「はいはい、それは悪かったわね。

 ほら、結べたわよ」

 いつも通りの口ゲンカを切り上げ、オレとかがみは走る体勢に入る。

 多分、この1回で練習は済むだろう。



「二人とも準備はいいね? よ〜い、どん!」



 オレとかがみは軽やかに地面を蹴った。





 久しぶりの感覚だった。

 いつぶりかというと大体3年前、オレがまだこの世界じゃなくて、自分が生まれた世界にいた時ぶり。

 きついシゴキで有名な教官に、何度も地面に叩き伏せられたあの時と一緒の感覚………

「っていうか、なんでだよ!?」

 オレはツッコミとともに上体を逸らす。



「それはこっちの台詞よ!!」

 これまた同じく上体だけを逸らしてかがみがこっちに向かって怒鳴ってきた。



「あんだけ言ったでしょ!? 左右左右って!!」

「だから左足を出しただろう!?」

「はぁ!? バッカじゃないの!! ってかバカでしょ!?

 あれは私から見てって意味よ!!」

「そんなの分かるか!! 何自分中心な考え方してんだよ、あんた!!」

「あんたがそれを言う!?」

「なんだよ、言ったら悪いのかよ!?」

「悪いに決まってるでしょ!!」

 全く譲らないオレとかがみ。



「あの〜お二人さん」

 見かねたのか、こなたが声を掛けてくる。



「取りあえずさ、最初の一歩目でこけてる時点で論外でしょ」

『…………』



 正面を向くと遠くの方でつかさが、オロオロしながらこっちを見ているのが分かった。





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