『どうもご迷惑をお掛けしました』

 オレとかがみは頭を下げて、駅員室を後にする。

 冤罪を釈明するのに1時間弱、それまでのあの駅員の疑わしげにオレを見てくるあの態度。

 思い出しただけでも腹が立つ!



「お前のせいだからな」

 オレは原因となった自分の彼女に怒りをぶつける。

「はあ!? そもそもあんたがしつこいのが悪いんでしょうが!」

 さすがに慣れているというかなんというか、かがみは怯んだ様子を全く見せずに言い返してくる。



「あんたが妥協してくれたら、こんなクソ面倒なことにはならなかったんだ」

「ほ〜もう少しで社会的に抹殺されそうなところを助けてくれた恩人に、そういうこと言うんだ〜」

「なっ!? あんたがもう少し彼女らしい行動してたら、そもそもこういうことにはならなかったんだよ!」

「何言ってんのよ、そっちの挙動がいかにもって感じだったんでしょ!? この、変態、パルマ!」

「パルマはしてないだろうがー!」

「はいはい、もうこれくらいにしときましょ

 また騒がれたい?」

「ぐぬぬぬぬ! かがみー!」



 歯噛みするオレを鼻で笑うかがみ。

 といってもオレもかがみも半分本気の半分冗談の戯れで、今のは一種のお互いのストレス解消みたいなもんだ

 まあ他人からしたらそう見えないだろうけど



「ってかがみ、今何時だ?」

 その証拠にオレの言葉にかがみは怒った様子もなく、思い出したかの様に自分の腕時計を見やる。

 そして少し目を見開き、小さな声で答える。

「十一時………」

「映画が始まる時間は………」

「十時四十五分」



 オレとかがみは同時に天を仰いだ。





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