「〜♪」

 寝転がりながら、ポッキーを食べ、ライトノベルを読む。

 まさに至福の一時といえる瞬間である。



「なんていうかなあ〜」

 私は影が生まれ、読みにくくなったラノベをずらす。その後ろからは反転しているシンの顔が出てくる。

 その顔は呆れてる類の顔。こういう時のシンはからかってくることが大である。

「何よ?」

 とはいえ、わざわざ私が本読んでる時にケンカをふっかけてくるのは希だ。

 少しシンをないがしろにしすぎただろうか?



「かがみってさ、わりかしだらしないよな」

「……えっ!? あっ!」

 私は慌てて体を起こしソファに座る体勢になる。

 そうだった。あまりに普通な感覚で忘れていたけど、ここはあくまでもシンの家。私の家ではないのだ。

 それなのに私は



「料理しないし、寝ながら食べて読書、家ではそうなのか?」

「あっ、いや、その………」

 いつものケンカと違って、私はしどろもどろ。

 そりゃそうである。

 私の意識していない、全くの『素』という部分をシンに見られたのだから。

 多分シンにはいや、家族以外でこんな姿を見せていない。

 ただこれは恋人として見せてはいけなかった。

 誰だってだらしない姿を見たらみっともないと思う、ましてやそれが恋人ならば。

 シンが私に対する好意が吹っ飛び兼ねないほどのことなのに、なんという迂闊さ。



 嫌われちゃう



 今更どうしようもないことなのに、私は持っている本を強く握った。





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