こんなものなのかしら?



 私は運ばれてきた食事を機械的に口に入れながら、ぼんやりと考えていた。

 別に料理の味の事ではない。

 妹や親友、後輩達より先に思いを告げて、それが叶って両思いの人との初めてのデートのはずなのに、私はまるで楽しくなかった。

 いや、私だけじゃない、恐らくシンの方も………。

 それなりの付き合いの人とでも一年半も付き合ってたら大体の考えは分かる。

 ましてやずっと好きだった人なら尚更分かる、シンもこのデートを楽しんでいない事に………。

 でもだからと言って卒業式にお互いの想いを告げたのは嘘ではないし、あの時の気持ちは今も色褪せてない。

 それなのに…なんでこんなに楽しくないんだろ………。

 こんなんだったら、いっそ――



「もう出るか?」

「え?」

 シンの言葉に机を見ると、お互い食後のコーヒすらもなくなっていた。

 当然、シンとの会話の記憶もなし。

 ただ二人して作業のようにご飯を食べていたという事だろう。

「オレが払っておくから、先に出ておけよ」

「う、うん」



 味も何も感じなかった。

 どうしてこんな感じになるんだろう…それが全然分からない………。

 私達にはまだ無理だったって事………?



 私は暗鬱な気分で喫茶店『デザートタイガー』のドアを押した。





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