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「おもしろかったわね」

「あ、ああ………」

 映画館が出たかがみの第一声に、オレは戸惑いが混じった声で答える。



 映画を見る前からオレ達2人に流れる微妙な空気のせいで、オレはほとんど映画を楽しめなかった。

 なんとかしようと、わざとボケた事を言ったのだがかがみには気付かれなかったらしい。

 とはいえ、かがみの方も映画を楽しめなかったらしく、オレに向ける笑顔はオレの望んだものではなく、無理に作ったような笑顔だった。

 やっぱりアクション物はまずかったか?

 オレ達2人の性格からして恋愛物は気恥ずかしくなると思っていたが、どうやらかがみはそうではなかったらしい。

 それでも文句の1つも言わないのは、オレがショックを受けないためだろうけど、

正直かがみにそういう顔されるほうがショックなんだけどな………。

 だけど元はといえばオレが映画の内容を勝手に選んだせいで、

かがみに気をつかわせる結果になったんだし、そんな事言えるわけがなかった。



「次、どうするの? そろそろお昼だけど………」

「ああ、オレのバイト先の『デザートタイガー』に予約してある」

 あの店はバイトしているオレが言うのもなんだが、喫茶店にも関わらず並みのレストランよりも雰囲気もいい、欠点は外装が虎なだけだ。

 かがみも何度か足を運んでるので、マスターとも顔馴染みだし、そんなに緊張しないとの判断したのだが………。

「じゃあ、行こ」

「ああ」

 それだけ言うと、オレ達は無言で歩き出した。

 さすがにさっきみたいにかがみを置いてく事はしなかったが、オレ達の間には外も内も壁みたいなものが立っていた。



 なんだろうな…全然………



 そこまで考えてオレは過ぎった思いを、頭を振って否定する。

 まだ半分も過ぎていない、これからだ。

 オレは自分にそう言い聞かせた。





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