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「私だってね、今日とっても楽しみにしてたのよ!!
それなのに、それなのにあんたは、ちっとも話し掛けてきてくれないし、
怒ってばっかりいるし、全然私をエスコート出来てないじゃない!!!」
オレの言葉に怒ったらしく、かがみはさっきのオレに劣らないくらい声を張り上げる。
確かに今日かがみのエスコートを出来てるとは言い難いのは認める。だけどかがみの言い分はあまりに勝手すぎる。
「それはこっちが話しかけてもアンタが気乗りしない返事をするからだろうが!?
あんな態度とられたら、誰だって話しかけづらいに決まってるだろ!!!
だいたい文句があればそのとき言えば良かっただろ!?」
「その言葉そっくりそのまま返すわよ!!
私の態度が気に入らなかったら、その場で言えばいいでしょ!?
計画を実行するのに一杯になって…私はデートをやりにきたんじゃない!
シンとのデートを楽しみに来たのよ!!!」
「オレだってなかがみが人生初めてのデートって聞いたから、いろいろ考えたんだぞ!!
絶対楽しくなるようにって、それを人の気も知らないで………!!!」
「知らないわよ!! まかせろって言ったからまかせたんでしょ!?
出来なかったら、素直に出来ないって言いなさいよ!
なんで一人で無理するの!?」
止まる事を知らないオレとかがみの口喧嘩。
「なんだよ! この寂しがり屋!!!」
「普段は頼りになるくせに、大事なところで失敗するダメ男!!!」
「自分の弱みを見せない意地っ張り!!! そんなんだからツンデレって言われるんだろ!!!」
「助ける時は必ず変なとこ触るスケベ!!!」
「普段は関係ないって顔してるくせに、いざとなったら面倒見るお節介人間!!!」
「女の子の頼みなら絶対断れない、女ったらし!!!」
互いにエスカレートしていき、オレ達はお互いの言葉すら聞いてはいなかった。
「アンタの事はよく分かってる!!!」
「あんたの事はよく知ってる!!!」
合わせたかのようにオレとかがみはそこで言葉を止める。
そして――
『だから!!!』
『遠慮するなー!!!』
重なる言葉、オレは弾かれたようにかがみを見る。
そしてかがみの方も呆然とオレを見ていた。