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九月二日。
これくらいになるとさすがに暑さも一時期より控えめになる。特に朝とかは気持ちのいい朝になる。
「ふっはあ〜」
だがそれに反して気持ちの悪い溜め息だか、呻きだか、嘆きだか、分からない声を出したのは私だった。
今日の気温に反して私は全然気持ち良くない。
まず昨日ワインを飲んだのが効いてるのか頭が痛い。そしてその後の私の醜態。
…………。
「いや〜! もっ一回昨日からやり直さして〜! それが無理ならこの場にいる人の昨日の記憶を消してー!!」
「なんだ、昨日の事覚えてるのかよ?」
私が枕に突っ伏しっていると、先に起きて片づけをしてるシンが声を掛けてくる。
「……少し………」
私は消え入りそうな声で答える。
そりゃ一言一句覚えているわけじゃないけど、自分がいかに恥ずかしい行為をしたかは覚えている。
「あ〜もう! 私はなんであんな事したんだろ〜?」
「いやいや、面白かったぞ。オレの事『シンくぅん』なんて呼んでな」
「言うなー!! いっ、痛たたた!」
私は自分の声のせいで起こった頭痛のために頭を押さえる。
最悪だ、まじ最悪。これは当分立ち直れそうにない。
「いや〜ホントにアレは撮っとくべきだったな」
「あんたね〜いい加減にしなさいよ」
自分では最大級の睨みを利かせてるつもりなんだけど、全く迫力を感じないらしくシンはなおもにやにやしている。
「仕方ないだろ? かがみが恥ずかしがってるの見るとついついからかいたくなるし」
くっ、こ、こいつは〜体調が戻ったら修正してやる!!
というか好きな子をいじめるって発想が小、中学生のものの気が………。
「……ごめん………」
「えっ?」
今までとは違う声のトーンに私は思わずシンの方を振り向く。
「昨日はあんな態度取って本当にごめん。
かがみの気持ちを踏みにじって、せっかくオレの誕生日祝ってくれたのに、嬉しかったのに………」
「ん〜ちょっと待って…という事は昨日のあのケーキ喜んでくれたの?」
私は頭痛がする頭でなんとか状況をまとめて、結論に辿り着く。
「当たり前だろ!? かがみがオレの誕生日を祝ってくれたんだから………」
「え〜っとじゃあ、なんであんな態度を………?」
シンは視線を逸らす、その仕草は経験上照れたり、恥ずかしがったりする時のものだ。
……という事はあれか、私が勝手に気を回してただけって事か………。