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「うっう〜ん」
「おっ、起きたか?」
かがみは上体を起こす。
起きたばかりでかがみの目はとろんとした目をしてオレの方を見てくる。
ちょ、ちょっと待て、その目はなんだ!? 反則過ぎるぞ!?
オレはかがみの事を直視することが出来ず、お皿を近付けるふりをしてかがみから目を逸らす。
「……ねぇ、シンくぅん」
「シ、シ、シンくん!?」
手に持った皿が踊る。
かがみがオレを『くん』付けするのには驚いたけど、メチャクチャ甘えた言い方にさらに驚いた。
正直いうとムチャクチャ利いた。もちろん良い意味で。
「……わたし本当にシンくんのことが大好きなのに、いっつも、いっつも怒ってばっかりで…わたしのこと嫌いだよね………」
「そんな事ないって」
オレはワインを飲みながら適当に答える。
いきなり脈絡のない事を言い出すかがみ。
どうせ酔ってる時の戯言だ、気にしないほうがいい。
しかしかがみのヤツ相当酔ってるな………、取りあえずその潤んだ瞳でこっちを見るのは勘弁してくれ。
「そうやって、自分だけ大人な対応してずるいわよ! わたしなんていつまでも子供でシンくんに迷惑掛けて………」
そう言って持たれかかってくるかがみ。
ひょっとしてオレは酔って夢を見てるのか? こんなのかがみじゃありえないぞ!?
ま、まあ、別に無しとは思ってないぞ、これはこれで可愛くて有りかな………。
というかかがみのどこが子供なんだ? そりゃちょっとは子供っぽいところもあるけど、
別に気にはならないし、何よりかがみはオレなんかより大人だと思うんだけど…まっ、酔ってるしな。
「こんなわたし、いつかシンくんに捨てられるのかな………」
「ない」
間髪入れずにオレは答える。
酔っ払ってるヤツの言う事は大概聞き流しだけど、今の言葉ばかりは聞き流す事は出来ない。
「いいかかがみ、オレはお前の事1番知ってるつもりだ。
お前は確かに不器用なとこがあるけど、オレには全部分かってる。
お前は凄く優しくて、強くて、何よりオレの事を1番に分かってくれる、最高のパートナーだ」
それを聞いたかがみは何かを考えている顔をする。
酔っている頭でさっきのオレの言葉を反芻しているのだろうか、少しして不安気な顔が一転、晴れやかな顔になる。
さすがかがみ、酔っていてもオレが本気で言ってるかどうかは分かるらしい。
「……シンくん、ありがとう!! わたしその言葉だけでものすごく嬉しい!!」
そう言うとかがみはオレに飛び込んでくる。
日頃この何分の一くらい積極的になってくれたら…と思ったけど、よく考えたら今度はオレの理性が持たない気がする。
やっぱり、いつものかがみが1番だな。
「よし、じゃあもう寝ような」
「うん!」
オレは抱き上げてかがみをベッドに運ぶ、普段のかがみだったら絶対に恥ずかしがる行為なのに、今のかがみは喜んで抱きついてくる。
ちょっともうなんか色々と反則過ぎて何が反則か分からない。まさしくフリーダム。
「じゃあ寝てろよ」
かがみをベッドに寝かせて、オレは片付けのために戻ろうと踵を返そうとすると手を掴まれた。
そして振り向くとかがみが潤んだ瞳でこっちを見つめている。
「ここにいて」
「いや、オレは片付けがだな………」
「一緒に寝よ」
さて酔っているとはいえかがみの頼みか後片付けか…比べるまでも無い。デスティニー対ダガーくらい圧倒的だ。
「じゃあ電気を消すぞ」
「うん!」
こうしてオレの20歳の誕生日は世界で1番愛しい人の手を繋ぎながら終わった。