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「はあ〜」
なんかもう怒る気にもなれない、というかどれに怒っていいのか分からない。
「もういいわよ、私も昨日早々と寝ちゃったし。それであおいこって事にしてあげるわよ」
「ホントか!?」
私の言葉を聞いて、さっきのしゅんとなってたのが一転いきなり元気になるシン。
ころころと表情が変わるわね。まあそこが可愛いんだけど。
「変なとこ子供なんだから………」
「なっ!? オレは子供じゃない!!」
私の何気ない呟きに必要以上に反応するシン。
……ん? あれ? ひょっとして………。
「そんな事言ってる間は子供って知ってる?」
「違うったら、違う! オレは子供じゃない!!」
完璧に子供にしか見えないシンが喚く。
よ〜し、これはさっきからかった礼をさせてもらおうかしらね。
「ねえ、酔ってる時の私ってどうだった?」
「そ、そ、それはだな………」
予想通り面と向っては恥ずかしいのかシンは口ごもる。
よし! もう一息!
「やっぱり酔ってた女なんて、可愛くもなんともないわよね………」
私は首を下げていかにもショックを受けた態度をすると、途端にシンはオロオロしだした。
「えっ、そ、そりゃ…可愛かったって…あ〜お前なー!?」
もう少しのところで、私は噛み殺していた笑みをシンに見つかってしまう。
シンは自身の狼狽振りを見られた恥ずかしさからか、
それとももう少しで恥ずかしい言葉を吐かされる事に怒ったのか、瞳よりも顔を真っ赤にさせてる。
でもこれで分かった
別にシンは特別に大人じゃない
ただあれだ。私がシンの前で可愛く見られたい、
綺麗に見られたいと思ってるのと同じで、女の子の前で格好良く見せたいという男の子の性だったという事だ。
「な、なんだよ、何笑ってんだよ!?」
シンが悔しさを隠す事無く私を睨みつけてくるが、全然怖くない。逆に可愛く思えてしまうばかりだ。
「そうそうプレゼントまだ渡してなかったから、片付けが終わってから渡すわね」
「誤魔化すなよな、オレはそんなので騙されないぞ」
「じゃあいらないんだ〜?」
「く〜」
私もシンも
いつかはこのやりとりも恥ずかしがることなく話す事が出来るのだろうか? その時はきっと私達大人になってるわよね?
二人とも二十歳になったんだし、これから一緒になっていこうね、素敵な大人に、素敵な大人のカップルに
私は全身を震わせながら後片付けをしてるシンの背中に語りかけた。
〜 F i n 〜