「ワインまだあるよな?」

「まだ一つ空いてるわよ」

 私は横に置いてある、ワインを手に取ってシンに見せる。

 さすがにいい値段のワインだけあって口当たりもよく、お酒をあまり飲まない私でもすいすいと飲めてしまう。

……もっとも理由は他にもあるけど………。

「バイト先でチーズを貰ったんだ。それをつまみにもう1つも空けようぜ」

 そう言うとシンは立ち上がり、台所へと消えた。



 私は空になっている二つのグラスにワインを注ぐ。

 ワインは濃い赤、香りも上品で大人。

 シンの瞳より濃い赤色のこの液体を飲んだら私は、シンよりも大人になれるのだろうか?

 そんな事を思いながら私はワインを口に運ぶ。



 自分の子供加減が嫌になった。



 お母さんの手紙の時もそうだ。

 私とシンの間では今更間のある話、それなのにあんなに慌てて。



 さっきのテレビだってそうだ。

 少し自分以外の女性を褒めただけで嫉妬。

 相手はアイドル、私なんかが容姿で適うはずない、それにシンは知り合いだし肩入れして見るのは当然だ。

 それなのに私はいちいち目くじらを立てて………。



 シンは大人、私は子供。



 そんな事は分かっていた、シンは私なんかと違って生死が係った人生を送ってきたんだし、精神年齢が違うのは理解していた。

 だけどいつかは追いつける、シンと対等になれる、そう思ってた………。

 でも違った、私とシンの差は付き合う前よりも開いてた。



 何も変わっていない、子供のままの私。



 どんどん成長していく、大人なシン。



 このままだったら、いつかシンに愛想つかれちゃう………



「……どうしよう………」

 私は口から出そうな言葉を、グラスに入ってる液体で押し戻す。

 グラスを置くと視界がぼやけていた。





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