お姉ちゃんの柔らかい髪をなでながら、ぼんやりと空を見ていたら、足音が聞こえて来た。

 参拝の人が探しに来たのかな?

 と思ったけど、まるでその足音はここにわたしたちがいるのが分かってるみたい。



「おっ、いたいた」

「シ、シンちゃん!?」

 角からひょっこり顔を出した、足音の正体はあの人だった。

 びっくりした〜心臓に悪いよ〜いきなりあの人が出てくるなんて………、ひょっとしてわたしも寝ちゃってる?

「おーい、どうしたー?」

 あの人がわたしの前で右手を上下に動かす。

 うん、多分夢じゃない!

 だったらお姉ちゃんも起こさないと

「あーいいって、起こしたら怒るだろ」

 肩を竦めるあの人。

 多分お姉ちゃんは怒らないと思うんだけどなー



「それに今日はトレーニングでちょっと寄っただけだから」

「そっかー」

 なんとかお姉ちゃんに起きてもらおうと、声を少し大きくするけど、お姉ちゃんは全く起きない

 よっぽど疲れてたんだね



 そんなわたしをあの人はじっと見つめる。

 ひょっとして、わざとらしかった?

「かがみってそんな顔するんだな」

 違ったあの人はお姉ちゃんを見てたんだ。

「……かわいいじゃん、あっ!」

 あの人が慌てて口を閉じる。

 まるで余計なことを言ったみたいな感じになってるけど、なんでだろ?



「うん、お姉ちゃんはすごっくかわいいよ!」

 それとすっごくかっこいい

 双子なのに尊敬しちゃうよ



「そうなのか、イメージないな」

「え〜そうなの?」

 お姉ちゃんが今のを聞いたら、凹んじゃうかも

「つかさはかがみのこんな姿知ってるんだよな?」

「えっ、う、うん………」

「だよな」

 そうしてあの人は難しい顔で考え始めたの。

 えーっと、わ、わたし、なにかお姉ちゃんの悪いこと言っちゃった?

 ど、どうしよ〜や、やっぱりお姉ちゃんを起こして………。



「悔しいな」

「えっ?」

「だってつかさはかがみのオレが知らない顔を知ってるし、かがみはこんなつかさを知ってるんだろ」

「えっ、こんなわたしって?」

「ん? あー喋りすぎた! 今のは忘れろよな!」

 そうしてあの人は、あっという間にきびすを返して走り去ってちゃったの。



「あれ?」

 わたしが呆然とする中、お姉ちゃんは変わらぬ寝顔を浮かべていたの。





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