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昼食に立ち寄ったファミリーレストラン、せっかくあいつと来るんだから、
もう少し雰囲気のある所にしたかったんだけど、今回の費用は全部あいつ持ちなため、それは止めておいた。
まあ、あいつと一緒に行くだけでどこに行くにも私もつかさも嬉しいのだけれど。
「注文は以上ですか?」
「はい」
「あれ?」
昼食を頼んだウェイトレスが去っていくと同時に、あいつが呟いた。
「どうしたの?」
「いやバイトから着信がきてた。ちょっと掛けてくるから、お前達先に食べててくれ」
そう言い残すとあいつはトイレの方に歩いていった。
さてと………
「つ・か・さ」
私は隣に座ってるつかさの頭を軽く小突く。
「は、はう! な、なに?」
「何? じゃないわよ。どうしたのよ? 朝からほとんど喋らないし」
つかさはお喋りというわけではないけど、
それでも今日は不自然なくらいに喋ってないのは、つかさをちょっとでも知ってる人なら分かる事だ。
ましてや双子である私にはなおの事分かる。
「そ、そうかな………」
つかさは無理矢理な笑みを作って私に向ける。
全くこの子は…私と似て隠し事は苦手なんだから。
「何考えてるのか当てよっか?」
「えっ?」
「私とシンが仲良くしてるし、自分の入る隙間なんてない、でしょ?」
「……うん、そんな感じ………」
隠しても無駄と思ったのか、つかさは私が思ってよりあっさりと首を縦に振る。
「……わたしは二人のお邪魔虫だもん………」
つかさの声は今にも泣きそうなものだった。
「何言ってんのよ。お邪魔虫はお互い様じゃ―――」
「違うの!」
私の言葉をつかさは遮る。
その瞳には自信のなさが表れていた。
「分かるもん、わたし………。
シンちゃんがお姉ちゃんにしか向けてない顔があるの、分かるもん…ずっと見てるから………」
「……そうね、確かにそんな顔あるかもね」
私の頷きにつかさはますます、しゅんとなった。
「でもそれは私も思ってる事よ」
「えっ?」
「つかさにもちゃんと向けられてるわよ、そういうシンの顔」
「えっ!? ……どんな時………?」
つかさの様子からどうやら自覚してないって事は言わなきゃダメか…悔しいからあんまり言いたくないのよね〜
「例えば、そうねー…つかさからのお弁当を食べた時の顔。私にはあんな顔してくれないわよ
……後はほら、あんた…よ、よく、あ、頭をなでられるじゃない?
あ、あれも羨ましいかな〜なんて思う時が、少しだけ! 少しだけよ! あるから………」
「……ほんと?」
「嘘付いても仕方ないわよ」
私はつかさにはこの手の、あいつの事で嘘を吐いた事はない。
それはつかさも知っているはず。
「つかさ」
私は優しくつかさの手を取る。
「あんた、前に言ったわよね? 勝負する、って。
そんな簡単に諦めるようなやつに勝っても私は嬉しくないわよ」
「お姉ちゃん………」
つかさは頷くと、ようやく今日初めての笑みを見せた。
こうやって私達も含めて、こなたもみゆきも塩を送り合うから、何時までも決着がつかないんじゃ………。
そんな考えが一瞬私の頭を過ぎ去っていった。