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「ではこれより、柊ツインズの誕生日会を始めたいと思いま〜す!
まずはプレゼント授与式!」
誕生日会の司会であるこなたが祝われるはずの2人よりハイテンションで場を仕切る。
そしてその言葉を受けてみゆきが立ち上がる。
こなたがやるとコントに見えるが、みゆきがやるととても上品な会に思えるのは、溢れ出す気品の違いなのだろう。
「かがみさん、つかささん、誕生日おめでとうございます。これはつまらない物ですが、どうぞ」
みゆきが2人に渡したのはお揃いのリングだった。
ああいうのって恋人同士に渡すんじゃないのか?
「みゆきには毎年高価なプレゼントもらっちゃって、ごめんね」
「いえ、お気になさらずに。私がプレゼントをしたくてお渡しするのですから」
「ありがと、大切にさせてもらうわね」
「ゆきちゃんありがとーわたしも絶対大切にするね!」
オレの杞憂を余所に嬉しそうにお揃いのリングを見る2人。
そうか。かがみとつかさは日頃から仲が良いからそういう類の物で良かったのか………
そうと分かっていればオレも…と思ったけど、そうしたらみゆきのと比べると明らかに見劣りがするだろうし………。
「じょあ、今度はわたし、いやわたしたちのターンだね♪」
オレが葛藤している間にもこなたの仕切りで場は進んでいく。
……本当に大丈夫か? 今更だけど不安になってきた………。
「わたしとシンのプレゼントは…これだ!」
「これ、って………」
「シンちゃん? ………」
2人はこなたとそれを指す指の先、つまりオレを交互に見る。
「そう! わたしとシンのプレゼントは『明日一日シンを好きにしていい権利』なのだよ!」
『ええ〜!!?』
かがみとつかさだけでなく、何故かみゆきも驚きの声を上げる…って当たり前か、こんな非常識なプレゼント滅多にないだろうしな。
「それ+二人には『ギアス』を授けよう!」
「ギアス? ……なにそれ?」
「要するにオレに1回だけ好きな命令を出せる権利って事だ。
言っとくけど、出来る範囲の命令だからな」
つかさの質問にオレは答えとあらかじめの釘を刺す。
そこらへんはかがみは分かっているだろうけど、冗談で言ってくるかもしれないし、何よりこういう時のつかさの天然は怖い。
「ではどんな感じか実例を見せよう!」
実例? そんなの打ち合わせ段階ではなかったはずだけど………。
「では、こほん…泉こなたが命じる! シン! 扉の向うにいる者を排除しろ!」
そういう事か………。
「イエス、マイロード」
オレは了解の言葉を出すと、立ち上がって部屋のドアを開ける。
そこにいたのは
「や、やあ、奇遇だねー…ぼくは断じて女子高生の話を盗み聞きするつもりじゃなかったんだよー」
「……そうじろうさん…だったら男達は下に行きましょうね」
オレは溜め息を吐きつつ、そうじろうさんを引っ張って階段へと向う。
「ちょっと待った〜シン君! これは取材! そう、次の作品の―――」
「シーンついでにケーキお願い!」
「了解ー!」
なおも何か言っているそうじろうさんを引きずりつつ、オレは下に降りた。