「……もう帰ろうかな」

 きっとつかさも今頃あいつと一緒にもう帰っているだろう

 だから、泣いた後の顔も見られない

 そう、つかさには知られたら駄目

 つかさはとても優しい子だから



 がらがら!



「つ、つかさ!?」

 教室の扉が開いたと思ったら凄い勢いで入ってきたのはまさかのつかさだった。



「よ、はぁはぁ、よ、よかった、はぁ、ま、まだはぁはぁ、い、いた〜」

「ど、どうしたのよ一体?」

 あまりの驚きに私は顔を拭くのすら忘れる。



「はぁはぁはぁはぁ…お姉ちゃんだめだよ! 自分の気持ちに嘘付いたら!!」

 呼吸を整えるとつかさはいつになく真剣で、そして少し怒った様子でこっちに近づいてきた。

「……何の話よ………」

「……お姉ちゃん、シンちゃんの事好きなんだよね?」

「……っ!!」

 さすがに今の私の状態では昨晩の様に動揺を隠すことが出来なかった。



「……わ、私はいいの…だ、だからあんたが―――」

「だめ! ぜっったいだめー!!」

 私の搾り出した笑顔と声はつかさの怒声とも言えるものにかき消される。そしてつかさの言葉は続く。



「このままだったら絶対後悔するもん!! お姉ちゃんもわたしも…そんなのいやだよ!!!」

「じゃあどうすればいいのよ!?」

 私はついに感情を抑えきれずに叫びだした。



「あいつは一人しかいないくて、私達は二人いるのよ!!!

 ……だったら、だったらどっちかが譲るしかないじゃない!!」

「お姉ちゃん………」

「……私はあんたに幸せになってほしいのよ………」

 やばい、泣きそうになってきた…今ここで泣いたらつかさがあいつのことを諦めちゃう………



「良かった〜わたしと一緒だ〜」

「えっ?」

 つかさの場違いな笑みから出る意味が分からない言葉に、私は思わず間抜けな声を上げた。





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