「ひいらぎ〜カラオケ行こうぜ、カラオケ」

 授業が終わって、帰り支度をしていると同じクラスの日下部が声を掛けてきた。



「あっ…今日はちょっと………」

「なんだよ〜またあいつらとかよ〜?」

「……そう言うわけじゃないけど…ごめん」

「みさちゃん、今日は仕方ないわよ、ね?」

 私の曖昧な返事から何かあったのかを察したのか、同じく同じクラスで日下部の保護者である峰岸が日下部を宥める。

「分かったよ。ひいらぎ今度は絶対だかんな」

「はいはい善処します」

「じゃあね柊ちゃん」

「うん、また明日」

 二人が帰った後の教室を見渡すと私一人になっていた。



「……これでいいのよね? ………」

 私は誰にともなく問いかける。



「考えてみたらあの二人ってお似合いかもね〜反対の性格だし

 そうよね、うん、きっとそう」



 教室に響く渇いた笑い。



「失恋…とは言わないわよね…フラれたわけじゃないし…だから大丈夫…だい………」

 なんで泣くのよ…笑いなさいよ。可愛い無二の妹に好きな人が出来たのよ

 私は姉なんだから、私が一番に喜ばないといけないのに、嬉しいはずなのに、なんで、なんで涙が出るの? こんなに苦しいの?



「止まってよ…誰か止めてよ…助けて………」



 私の願いを聞いてくれる人は誰もいなかった。





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