「す、すみません、出来心でしたーッ!」

 腕を組む四人に対して、今のワタシに出来るのは、この土下座という手段しか残されていなかった。



「……こなた、この本ってどのくらいあったの?」

「さあ? オマケっぽかったし、五〇部あるかないかじゃない?」

「ご、五十人に見られたんだ………」

「……わ、私と、そ、その、は、恥ずかしいです………」



 再び顔を真っ赤にして、もじもじしだす泉先輩を除く三人のヒロイン候補。

 やはり、その姿は、なんというか、イイッすねー



「ひよりん、余裕じゃないか。エピソードを捏造しておいて」

「で、でも、この話皆さんの実話をもとに作りましたので………」

「最初の部分だけね、告るところからはひよりんのスーパー妄想タイムだったでしょ?」

「は、ハイ………」

 よかった、さっきトイレ行っといて。泉先輩の眼光が怖すぎっス!

 実はこの中で一番悶えたのは泉先輩ではなかったのだろうか?



「どうすんのよ! これ!? 私もう外歩けないわよ!!」

「だ、だよね、わたしでもこれが誰かって分かるもん………」

「まあまあ二人とも。

 多分その点は大丈夫。配られた部数も少ないし、キャラも髪形とか装飾品が微妙に違うから、歩いていて指、指されるってことはないよ〜」

「そ、そうでしょうか?」

「異世界から来た人間でも、よっぽと仲良くならないとそうだって分からない、でしょ?」

 泉先輩のこの言葉はかなり説得力があったらしく、三人の先輩達はしばし考えつつ、ある程度は納得した顔をしたっス。

 とはいえ、なぜ追手側だった泉先輩がワタシの助けを? まさかまだ企みが?



「でもみんな、落とし前は欲しいよね?」

 泉先輩の浮べる笑みはいつもの様に緩やかなものに見えるっスけど、それそれはとてもゾクッとさせる笑みだったっス。





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