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「ささ、どうぞどうぞ」
「失礼しますっス」
泉先輩の部屋に入ると、そこにいたのは、天然ドジっ子専門学生のつかさ先輩、ツンデレ女学生かがみ先輩、
そして完璧女学生高良先輩、と相変わらずハイスペックな人々。
しかし、それにしても
ワタシは改めて四人を順に見渡す。
会う度に女性っぽくなってるっスねー
服や化粧もだけど、佇まいが同じクラスの普通女子と比べても明らかに違う。
これが女という性別がそうなのか、それとも恋をしてるからなのかはワタシには分からないっスが、
『み〜んな十八才以下♪』『ロリ至上主義』ともいえる二次とは明らかに違う、三次元の女の良さというのが、ここにはあったっス
とはいえ、なぜワタシがここに?
「ひよりんさー夏コミ参加したよね?」
「はあ、まあ………」
この場合の泉先輩の質問は需要側という意味でなく、供給側という意味。しかしやっぱり知り合いに、
自分が同人活動してるのを知ってる人がいるのは、居心地がよくないっスねー
「良かったよ、ひよりんのとこの新刊」
「は、はあ、ありがとうございますっス」
購入した本のサークルは大きくなるという、伝説すらもっている泉先輩にそんな言葉を頂ければすごく自信にはなるんですけど、
なぜかワタシの中ではそれと比例して嫌な予感がどんどん大きくなっていたっス。
「いや〜驚いたよー」
「うっ!」
泉先輩が皆さんの前に出した同人誌を見て、ワタシは思わず一歩仰け反る。
その同人誌はワタシのサークルのところから出したものではない、ないのだけれども………
「この新刊にね、ひよりん短編だけどゲストで出してるんだよね、ねえひよりん?」
「は、はあ、まあ………」
ワタシは秋の夜風に夏服を着て、ずっと立っていた時みたいに、額から冷や汗を流し、体は寒気を覚えていた。