『乙女の夢』




 私は目の前に広がる光景に目を細める。

 それは楽園ともいえるような、地上に住んでいる人にとってはあまりにそれは眩しすぎる光景。

 しかし私は決してそこから目を逸らすことはない

 何がいいのか? と問われれば、答えるのは難しい。ただ良いものはいい、それだけのこと



「ヒヨリ、またクサったメでフタリをミてますよ」

「おっと」

 パティちゃんの言葉にワタシは眼鏡を上げた振りをして、妄想被写体である二人の視線を交わす。

 いかん、いかん、またやってる

 友達を創作活動の種にするのはよくないと、毎度毎度その場面で反省はするんだけど………。

 どうにもこうにも身に付けたスキルは、ゲームの様に簡単に外したりはいかないもんだなー





「おお〜みんな揃ってるねー」

 ワタシがいつもの様に二人にどう誤魔化そうかと、あれこれ考えている間に入ってきたのは、

ゆーちゃんの従姉でワタシ達の通ってる学校のOGである泉先輩だったっス。



「ゆーちゃんごめーん、田村さん借りてもいい?」

 思い思いの挨拶が終わり、泉先輩はゆーちゃんではなく、ワタシを指名してきたっス。

「ワタシなら大丈夫ですよ」

 少し不思議に思いながら、ワタシは立ち上がる。



 大方、濃ユ〜イ話でもするのだろう

 かなりなハイレベルのオタクである泉先輩だけど、周りの親しい人々にはそっち系の人は殆どいない。

 それなのに、いつも輪の中心にはいるのはこの人

 この人の前だと、オタクだろうが、一般人だろうが、異世界から来た人だろうが、関係なくおもしろおかしい時間を共有できるのだ。



「いってらっしゃーい、おミヤゲ、ヨロしくデス!」

 流暢とも言える日本語でワタシを送り出すバティちゃん。

 この時になぜ気付かなかったのか

 あの隠し事が苦手なパティちゃんが不自然なくらいにニヤニヤして、ワタシを見ていたことに





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