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「38.5度か、なかなか下がらないな」
体温計に出される数値はオレの熱じゃない
この体温は体調を崩して寝込んでいるゆたかの体温だ
「ごめんなさい、迷惑を掛けて………」
「えっ、いや………」
オレの呟きが聞こえたのか、ゆたかが申し訳なさそうに謝ってくる。
「ゆーちゃん、わたし達は気にしてないよ。
今は風邪を治すことだけを考えよ、ねっ?」
口下手なオレの変わりに、ゆたかの従姉妹でこの家では姉代わりのこなたが優しい言葉を掛ける。
ゆたかが寝込んだのは2日前の事だった。
一時は熱が40度近くにまで上昇し、そうじろうさんとオレを大いに慌てさせたが、
そんな情けない男共を叱咤してこなたはテキパキと看病の指示を出した。
こなたがあそこまで真剣な所は片手で数えるくらいしかない
それだけこなたはゆたかの事を実の妹の様に大切にしているんだろう
もちろんオレだって血の繋がりはないけど、ゆたか大切に思う気持ちはこなたに負けていないつもりだし、
出来る事なら今のゆたかと変わってやりたいくらいだ
だがそれは出来ない事というのは分かってる
だからせめてゆたかの助けになればと思い、オレもこなたやそうじろうさんと共に看病している
迷惑なんて思った事は一度もなかった
「シン、今日の看病だけどわたしがするよ」
こなたがそう提案してきたのは、オレ達がゆたかの部屋から退出した後だった。
「何言ってんだ? オレがする」
こなたの方を見てオレは首を横に振る。
「だって一昨日はお父さん、昨日はシンがやったのにわたしだけ何もしないってのは………」
こなたのゆたかを心配する気持ちは分かる。
オレがこなただったら、きっとオレも同じ事を言うはずだ。
だけどこなたの提案を呑むわけにいかない。
こなたは確かに格闘技をやってたから体格のわりに丈夫な方だけど、
それはあくまでもこなたの体格での話、平均的に見ると丈夫いえるほどでもないし無理をさせるわけにいかない。
「だってシンがやったら二日連続になっちゃうよ」
「知ってるだろ? オレは風邪を引かないんだ」
オレが言ってるのは強がりでもなんでもない。
普通はそんな体になるのは不可能だ。そう、この世界の技術では………
だけどオレの元々いた世界は技術で遺伝子を強化できる世界だった。
そしてオレはそのお陰でオレは風邪を引いた事はない、それはこの世界に来ても例外じゃない。
こなたはその事を知ってる数少ない人物だ。
「でもそれはゆーちゃんは知らないんだよ?」
「だからなんだよ?」
こなたの言葉の意味が分からず、オレはこなたの方を睨む様に見る。
オレが異世界から来たという事を確かにゆたかは知らない、でもそんなことは今は関係ないはず………
「大アリだよ」