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「ほなHRはここまで」
「起立、礼」
学級委員長の高良が慣れた様子でするも、やっぱり普段の高良と違う。
高良の進路目標は難関大学、それに合格するまでは緊張しっぱなしやろ。
他の生徒も多かれ少なかれそんなもん
変わってないのは
「はうっ、次の英語の教科書忘れた!」
柊妹みたいにもうすでに進路が決まってるやつ
「しまった、英語の宿題忘れた〜!」
……あと泉、これだけマイペースやとひょっとしたら、大物なのかもしれん
後は
「黒井先生」
「なんや?」
「先生、疲れてるでしょ? オレにできることがあれば言って下さいよ」
アスカ。こいつも難関大学受けるはずやのに、なぜかいつもと変わらず。
こいつの性格上一番テンパりそうなはずやのに、……それともこんなんはあいつにとっては修羅場でもなんでもないんか?
「疲れてへんって、元気百倍や」
「そんなことないですよ、疲れてます」
「なんで言い切りやねん」
「……そうだな〜」
こっちの答えを思いっきり無視してアスカは腕組みをしだす。
あかん、めんどいのに捕まった!
こいつは悪い生徒とは違うけど、思い込みの激しさといい、難儀な生徒には違いない。
「先生って野球好きでしたよね?」
「ああ、まあな」
おそらく名案とはいえん迷案をおもいついたんやろう、アスカの赤い瞳が光る。
しゃーない、こうなったらとことん付き合ったるわ!
「今、確か野球キャンプってのをやってますよね、見に行きましょう!」
「学校あるやろ?」
「日曜に行けばいいでしょ」
「交通費は?」
「バイトしてるから大丈夫です」
「新幹線通ってないで? 飛行機で行く気なんか?」
「じゃあバイクで行きましょう!」
うちの質問に自信満々に答えていくアスカ。
だけどうちは今のやりとりでアスカがあることが分かってないことに気付いた。