視線、それはゲームセンターに入る前から感じていたものだった。

 殺気は感じられないな

 一瞬そんな事を考えた自分に苦笑する。

 ここでは俺やシンを狙うものなどまずは皆無のはずだからだ。

 となると俺が感じたのは気のせいだったのか?

「ほらレイ、次はお前がやれよ! 勝負だからな。

 これは音ゲーっていってさ………」

 それに気配を感じているのなら、シンが何か言うはずだ。

 いくらシンが戦いの中に長らく身を置いていないとはいえ、ある程度の訓練は続けているのだから、何も感じないというのはありえない。

 現にシンは今も死角から人が来てもあっさり回避している。

 だとしたらやはり俺の気のせいなのだろう。

 普段のシンの行動を見ていたらもう少し緩やかに出来ないものかと思っていたが、中々に難しい。



 今度からはもう少し多めに見てやるか



 オレはシンから受け取ったコインをゲームに入れながら、そんな事を思っていた。



「まあ、こんなもんだな」

 俺はゲームを終えると、専用のコントローラーを置く。

「ちょっ、ランキング1位かよ!? ありえないだろ!?」

「俺はピアノをしていたんだ。これくらいは簡単だ」

「なんだよ、汚いぞ!」

「初めてやるゲームを相手に勝負を挑むのは汚くないのか?」

「うっ………」

 俺の問いにシンは押し黙る。

 少しの沈黙。



『ハハ、ハッハッハッ、ハハハハ!!!』

 そして同時に笑い合う俺達。



 シンを見守っていたい

 一生は無理でもせめて、シンにとって本当のパートナーと呼べるのが現れるまで



 そのためだけに一日蘇る事を選択したのだが、

本当はシンと利害を度外視してただの友として遊びたいが為に、俺はこの選択をしたのではないだろうか?



 だがそれもいい

 そのためだけに、一日だけ蘇った。それも悪くない。





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