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「こっちはレイ・ザ・バレル、あっちの世界での戦友だ。
でこっちが、泉こなたと柊かがみ」
私達はこなたが作った朝食を食べながら、あいつから簡単なお互いの紹介を受けた。
「そんな事より、大丈夫かシン?」
「大丈夫、いつもの事だから………」
あいつは頬を擦りながら溜め息混じりに答える。
女の子の寝床に無断で入って来てこれくらいですんだのだから、私とこなたに感謝するべきである。
それにしても………。
私はあいつの隣に座っている人物を眺める。
男の子とは思えない髪の艶、顔立ち。ハンサムという言葉ではとても足りない、まさに絶世の美少年。
あいつもかなり整った顔してるし、あいつのいた世界というのは美形が多いのだろうか?
「それできみは何しに来たの?」
こなたにしては珍しく警戒、というより明らかに敵意のこもった声。
そして恐らく私も今のこなたみたいな顔でこの美少年を睨みつけているのだろう。
この『レイ』という少年。あいつの話では無二の親友という事なんだけど………。、
こなたの話だと、あいつを利用して戦いの駒にしていたとの事。もしそれが本当だったら私は………。
「シンを連れ戻しに来た」
レイが言った冷静な言葉に私達三人の言葉がぴくりと震える。
「……と言ったら?」
そう言ってレイは冷徹な笑みを浮べ、私達を見渡す。
私は嫌な汗をかいていた。
「元々シンはこの世界の住民ではない。それならあるべきところに戻る。それが自然の摂理だろう」
ばん!!!
私はテーブルを目一杯叩く。痛いけど今はそんな事は小さな問題だった。
「ふざけないでよ!? あんた、シンにまだつらい目をさせるっていうの!?
なんでよ!? シンはもう頑張ったわよ、もう休ませてあげなさいよ!!」
あいつの話ではあっちの世界はまだ戦争が続いてるし、それが当たり前の社会になりつつあるらしい。
はっきりいってそんな世界にあいつを行かせたくないし、行って欲しくない。
行ってしまったらきっとあいつはあの目に戻ってしまう。
暗く、哀しい目に。そして何より死んでしまう事だってある。
そんなのは嫌! やっとあいつは心から笑える様になったのに…それなのに、また過酷な世界に戻されるなんて酷すぎるわよ………。
「絶対にさせない! あんたの思い通りになんか!!!」
「お、おいかがみ………」
「ねえ、レイくん。もしたいした理由もなくシンを元の世界に戻すって言うなら、わたし達は納得しないよ〜。
まあどんな理由があっても、ここの二人とここにいない二人を納得させれるとは思えないけど」
そう言ってこなたは私の方を見てにやりと笑う。まるで私にだけおいしいとこを持っていかせないと言わんばかりに。
例え自然の摂理だろうと、私達はそんなのを絶対認めない。あいつは私達と一緒にこの世界で生きていくんだから!!
「お前達いい加減にしろ!! なんでいきなり喧嘩になるんだよ!?
レイもこなたもかがみもオレにとっては大切な人だ、そのお前達が喧嘩なんてするなよ!!!」
あいつの言葉に私もこなたもしゅんとなる。
もし私達が首を縦に振るとすればあいつから、元の世界に戻ると自分の意志で言ってしまう時だ。
そうしたら私達には止める手段はない。
そして今のあいつならそう言いそうな気がする…大切な人、レイの頼みなら………。
「すまない。冗談だ」
…………。
いきなり真顔で言ってきたレイの言葉を私達は誰も理解する事が出来なかった。
冗談? 何が?
「少しからかうだけだったんだが…言いそびれてしまった…すまない」
その顔は悪戯がバレた子供の顔…という事は本当に冗談………?
「勘弁しなさいよ〜」
レイの言葉に私は突っ伏すのを耐えるのがやっとだった。