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『相変わらず楽しそうだな………』
シンと少女達との会話を見てると、微笑まずにはいられなくなる。
シンは本当に少女達に想われている。そして少女達との影響でシンは俺達と一緒にいた時よりはるかに心から笑っている。
『やはり良かったな…お前をここに連れてきて………』
『レイ君、大変よ、大変!!』
感慨深気にシンを見ていた俺の耳に、女性の声が入ってくる。
振り向くと、そこにはさっきシンと話していた少女の一人とそっくりな容姿の女性が俺の方に向かってきていた。
『どうかしたんですか? かなたさん』
『大変なのよ! レイ君がこの世界の住人じゃないって、上にバレたのよ!!』
『それが何か困るのですか?』
かなたさんの言葉に俺は頭を捻る。
まだ俺は死んでから一年ほどしか経っていないため、あの世のルールというのがまだ分かっていない。
そんな俺に死んでから十数年経っているかなたさんはいろいろと教えてくれる。
いわばかなたさんはこの世界で俺の保護者といってもいい人だ。
シンはこのかなたさんの夫であるそうじろうさんとその娘こなた嬢にお世話になってるから、俺達二人は泉家には足を向いて寝られないだろう。
『あのねこの世界で幽霊をするには、この世界に一日でも住んでないといけないのよ。
それに該当してないから、レイ君は元の世界に帰らないといけないのよ』
『なんですって!?』
確かに俺がここの世界にきた時は、シンと違って死んでいたしあっちの世界には、ラウやギルといった俺の大切な幽霊がいる、だが………。
『心配なんでしょ? シン君の事が?』
『……はい』
俺がシンをこの世界に連れてきた以上、俺はシンが幸せになるのを見届ける義務がある。
『……なんとかなりませんか………』
『うふふ、シン君の事が心配なのね』
俺が無茶な事を言うのを予想していたのだろう、かなたさんは笑みを浮かべながら、胸元から小瓶を取り出した。
『これを飲めば、あなたは一日だけあの世に戻れるの。そうしたらあなたはこの世界の住人という証明になるわ。
ただ問題があって、あなたが生き返ってシン君やこなた達に会っても、
一日経つとあなたにあった記憶は消えてしまうの…せっかくシン君と話せるのに、それはつらい事だと思うけど………』
『かまいません、それでシンをまた見守ることができるのなら』
『それならいいけど…それともう一つ問題があるの』
『なんですか?』
俺はかなたさんから瓶を受け取りながら尋ねる。
『すっごく、まずいの』
『…………』
改めて俺は瓶の中身を見ると、中は紫色の液体に何やら詳しく知りたくないものが色々と浮かんでいる。
『……気にしません! 薬には慣れています!』
そうだ! 俺は生前老化を防ぐ薬を飲んでいたんだ。この程度は問題ない…はずだ。
『では、いきます!』
掛け声一つして、俺は薬を口に流し込む。
『うっ………』
な、なんだこの苦さは!!! これは人間の飲むものではない! いや、俺は霊だから、問題ないのか………。
だ、だがこれは、生前に喰らったフルバーストなんかとは比較にならないほどの苦さいや、痛さだ!
『ぐぅ………』
情けない事だが、あまりの事に俺の意識は薄れていった。