18
「もう知らん!」
「ちょっと待て、悪かったってレイ」
「全然反省してるようには見えないが」
「反省してる、してます。 なあ、つかさ、みゆき」
『ごめんなさい』
「もういい、分かった」
ピッタリのタイミングで頭を下げる三人を見てると、真面目な雰囲気を出していた、さっきまでの自分達がおかしいとすら思えてくる。
これが彼女達がもっている魅力なのだろう。
「レイ、もう会えない、って事はないんだろ?」
「お前が死ねば会える。だがそれはまだまだ先になりそうなのでな。
お前の結婚式には顔を見せる様にしてみる」
「オレが結婚しなかったらどうするんだよ?」
「大丈夫だ、それだったらお前の死期はグッと近づく、そうだろ?」
「そうですね」
「月ない夜は気をつけろ〜」
「オイオイ、物騒だな」
本当に分かっていないのだから、困った奴だな。
彼女達のこれからの苦労を考えると同情を禁じえない。
「こんな奴だが、これからもよろしく頼む。
俺はもうフォローするのに疲れたからな」
「はい、お任せ下さい」
「うん、頑張るね」
「だから、何でオレだけ蚊帳の外なんだよ………」
拗ねてるシンを見て今日初めて、顔を合わせた面々は笑顔を交わした。
「さて、本当に最後だな」
「レイさん、体が………」
「透けてる」
俺の体は輪郭は残っているものの、ほぼ透明になり反対側が透けて見える。
「レイ、最後に聞いていいか?」
「意味はないが」
それでもいい、とばかりに頷くシン。
「なんでオレをこの世界に送ったんだ?
……オレはあの世界に必要ないと思ったからか」
恐らくそれはずっとシンが気にしていたのだろう。
彼女達と穏やかな日々を過ごしている時もずっと。
「お前は優しすぎる。きっとあの世界に留まっていたらお前はもっと傷つく。
だからせめて平和な穏やかな世界に、それが利用していた俺のせめてもの罪滅ぼしだ。
迷惑だったか?」
「ああ、そんなのはオレが決める事だし、勝手に決められたら迷惑だ。
……でもお前のいらないお節介のお陰でオレは大切な人達に出会えた。ありがとうな、レイ」
この世界でのシンは元いた世界の時ほど力をもっていない。
それなのに強くなっている。それは俺の気のせいではないだろう。
「それはお前やその大切な人達が必死に掴み、作り上げたものだ、俺は何もしていない」
「でもその運命を与えてくれたのはレイだ」
「だがその運命を切り開いたのはお前だ、シン」
そして誰一人として話さなくなった。
だが、それは心地の良い沈黙といえた。
悔いはなかった、いや一つだけ。だが、これはとても聞けなかった。
聞いたら、シンを困惑させるだけだから。
生きてる人の明日を死者が引っ張ってはならない。
「じゃあな、レイ」
「ああ」
「レイは死んじゃってるけどさ、オレの最初の親友だ。これだけはどうしても言いたかった。
今日は楽しかった」
不覚にも言葉を出せなかった。
シンは笑っていた。
俺が死んだという事を理解し、受け止めて。
シンはもう明日をしっかりと見て、生きている。
それが出来るのはシンの強さと彼女達の存在。
もう満足だ
聞きたい答えも聞けたのだから―――