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「もう知らん!」

「ちょっと待て、悪かったってレイ」

「全然反省してるようには見えないが」

「反省してる、してます。 なあ、つかさ、みゆき」

『ごめんなさい』

「もういい、分かった」

 ピッタリのタイミングで頭を下げる三人を見てると、真面目な雰囲気を出していた、さっきまでの自分達がおかしいとすら思えてくる。

 これが彼女達がもっている魅力なのだろう。



「レイ、もう会えない、って事はないんだろ?」

「お前が死ねば会える。だがそれはまだまだ先になりそうなのでな。

 お前の結婚式には顔を見せる様にしてみる」

「オレが結婚しなかったらどうするんだよ?」

「大丈夫だ、それだったらお前の死期はグッと近づく、そうだろ?」

「そうですね」

「月ない夜は気をつけろ〜」

「オイオイ、物騒だな」

 本当に分かっていないのだから、困った奴だな。

 彼女達のこれからの苦労を考えると同情を禁じえない。



「こんな奴だが、これからもよろしく頼む。

 俺はもうフォローするのに疲れたからな」

「はい、お任せ下さい」

「うん、頑張るね」

「だから、何でオレだけ蚊帳の外なんだよ………」

 拗ねてるシンを見て今日初めて、顔を合わせた面々は笑顔を交わした。



「さて、本当に最後だな」

「レイさん、体が………」

「透けてる」

 俺の体は輪郭は残っているものの、ほぼ透明になり反対側が透けて見える。

「レイ、最後に聞いていいか?」

「意味はないが」

 それでもいい、とばかりに頷くシン。



「なんでオレをこの世界に送ったんだ?

 ……オレはあの世界に必要ないと思ったからか」

 恐らくそれはずっとシンが気にしていたのだろう。

 彼女達と穏やかな日々を過ごしている時もずっと。



「お前は優しすぎる。きっとあの世界に留まっていたらお前はもっと傷つく。

 だからせめて平和な穏やかな世界に、それが利用していた俺のせめてもの罪滅ぼしだ。

 迷惑だったか?」

「ああ、そんなのはオレが決める事だし、勝手に決められたら迷惑だ。

 ……でもお前のいらないお節介のお陰でオレは大切な人達に出会えた。ありがとうな、レイ」

 この世界でのシンは元いた世界の時ほど力をもっていない。

 それなのに強くなっている。それは俺の気のせいではないだろう。

「それはお前やその大切な人達が必死に掴み、作り上げたものだ、俺は何もしていない」



「でもその運命を与えてくれたのはレイだ」

「だがその運命を切り開いたのはお前だ、シン」



 そして誰一人として話さなくなった。

 だが、それは心地の良い沈黙といえた。



 悔いはなかった、いや一つだけ。だが、これはとても聞けなかった。

 聞いたら、シンを困惑させるだけだから。

 生きてる人の明日を死者が引っ張ってはならない。



「じゃあな、レイ」

「ああ」

「レイは死んじゃってるけどさ、オレの最初の親友だ。これだけはどうしても言いたかった。

 今日は楽しかった」





 不覚にも言葉を出せなかった。

 シンは笑っていた。

 俺が死んだという事を理解し、受け止めて。

 シンはもう明日をしっかりと見て、生きている。



 それが出来るのはシンの強さと彼女達の存在。



 もう満足だ

 

 聞きたい答えも聞けたのだから―――





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