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「シン、ここでいい」

 レイがそう言ったのは、公園にある小さな雑木林を少し歩いてからだった。



 もう少ししたら、レイは消えてしまう。

 そしてオレも今日の事を忘れる。

 レイと一緒に遊んだ事を



「人間というのは不思議だな、シン」

「えっ?」

「無駄と分かっているのに、探してしまう。そう今のようにな」

「………レイ」

 レイの口調は相変わらずクールなものだった。

 でもきっとオレと同じだ。何か言葉を探そうとしてる。

 でも何を言ったら良いのか分からない。

 話したい事はまだまだあるはずなのに。



「そこの二人、いい加減出てきたらどうだ?」

 レイが声を少しだけ大きくする。対象はオレじゃない。

 後ろを振り向くとみゆきとつかさが木の陰から出てきた。



「お前達、なんで………」

「シンちゃん、ごめんね………」

「すみません、隠れて付いて回るという事はいけないと分かっていながら………」

「別にそれはいいけど、でも、なんで………」

「気付かないのか、お前を心配してきたんだろう」

「えっ? ……あっ」

 そうか、オレが二人の知らない人間と一緒にいたから、心配してくれたのか



「こいつはレイ、前にいたところでの知り合いだ」

 今は一から説明してる時間が惜しいので、オレは簡潔な説明のみに止める。

 オレの過去を知らないつかさは半分分かったような、分からないような顔をしつつ頷き、知ってるみゆきは驚いた顔をする。

「あの、それでは………」

 聡明なみゆきはオレが頷くと、もう何も聞いてこない。



「あ、あの〜」

 蚊帳の外と感じたのか、つかさがおずおずと尋ねる。

 今つかさに説明してたら時間がなくなっちまう。それにつかさにオレの過去を話すつもりはない。

 どういう風につかさに説明するか、思案しているうちにつかさは言葉を続ける。

「ひょっとして、レイさんって男の子なんですか?」

 シリアスな空間が音を立てて崩れていった。



「はい?」

 真っ先に我に返ったのはオレだった。

 よほど怪訝な顔をしてたらしく、つかさはいつも以上にオロオロしだす。

「だ、だって、凄く整った顔だったし、髪も凄く綺麗だし、声は聞こえなかったし………」

「男だ」

 全身を震えながらレイは答える。

 そしてつかさではなく、何故かオレに詰め寄る。

「シン、俺はそんなに男に見えないのか? 仕草とかで分からないものなのか?」

 いや、時々男じゃ取らない行動をするような気がするけど、さすがにそれは言えない。

「……お恥ずかしながら、私も最初はそうだと思っていました」

「なん、だと………」

 絶句するレイ、オロオロするつかさ、フォローの言葉を探すみゆき。

 ダメだ、限界だ



「クッ、クックックック、ハッハッハッハッハ!!」

 オレはついに腹を抱えて笑ってしまった。





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