17
「シン、ここでいい」
レイがそう言ったのは、公園にある小さな雑木林を少し歩いてからだった。
もう少ししたら、レイは消えてしまう。
そしてオレも今日の事を忘れる。
レイと一緒に遊んだ事を
「人間というのは不思議だな、シン」
「えっ?」
「無駄と分かっているのに、探してしまう。そう今のようにな」
「………レイ」
レイの口調は相変わらずクールなものだった。
でもきっとオレと同じだ。何か言葉を探そうとしてる。
でも何を言ったら良いのか分からない。
話したい事はまだまだあるはずなのに。
「そこの二人、いい加減出てきたらどうだ?」
レイが声を少しだけ大きくする。対象はオレじゃない。
後ろを振り向くとみゆきとつかさが木の陰から出てきた。
「お前達、なんで………」
「シンちゃん、ごめんね………」
「すみません、隠れて付いて回るという事はいけないと分かっていながら………」
「別にそれはいいけど、でも、なんで………」
「気付かないのか、お前を心配してきたんだろう」
「えっ? ……あっ」
そうか、オレが二人の知らない人間と一緒にいたから、心配してくれたのか
「こいつはレイ、前にいたところでの知り合いだ」
今は一から説明してる時間が惜しいので、オレは簡潔な説明のみに止める。
オレの過去を知らないつかさは半分分かったような、分からないような顔をしつつ頷き、知ってるみゆきは驚いた顔をする。
「あの、それでは………」
聡明なみゆきはオレが頷くと、もう何も聞いてこない。
「あ、あの〜」
蚊帳の外と感じたのか、つかさがおずおずと尋ねる。
今つかさに説明してたら時間がなくなっちまう。それにつかさにオレの過去を話すつもりはない。
どういう風につかさに説明するか、思案しているうちにつかさは言葉を続ける。
「ひょっとして、レイさんって男の子なんですか?」
シリアスな空間が音を立てて崩れていった。
「はい?」
真っ先に我に返ったのはオレだった。
よほど怪訝な顔をしてたらしく、つかさはいつも以上にオロオロしだす。
「だ、だって、凄く整った顔だったし、髪も凄く綺麗だし、声は聞こえなかったし………」
「男だ」
全身を震えながらレイは答える。
そしてつかさではなく、何故かオレに詰め寄る。
「シン、俺はそんなに男に見えないのか? 仕草とかで分からないものなのか?」
いや、時々男じゃ取らない行動をするような気がするけど、さすがにそれは言えない。
「……お恥ずかしながら、私も最初はそうだと思っていました」
「なん、だと………」
絶句するレイ、オロオロするつかさ、フォローの言葉を探すみゆき。
ダメだ、限界だ
「クッ、クックックック、ハッハッハッハッハ!!」
オレはついに腹を抱えて笑ってしまった。