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 シンが次に連れて来てくれたのは、古い家だった。どうやら何かの店らしい。

「ほら、レイ」

「なんだこれは?」

 俺はシンに渡された物体を見ながら尋ねる。

 見た目は小さな飴玉の様だが………。

「いいから、いいから口に入れてみろって」

 促されるままにそれを口に入れる。

「……んっ!?」

 口に飴を含んだ瞬間、それが口の中で弾ける。

 いや、比喩ではない。本当に口の中で弾けてるのだ、飴玉が。



「はぁはぁ、シン!」

「引っかかったな!」

 口の中の物を無理に飲み込んでから睨み付けるが、シンは悪びれた様子もなく手を叩く。

「子供かお前は」

「悪かったってほら、飲み物」

 そして俺は疑う事なく、シンから渡された飲み物を口に入れて

 ……不思議な味だ、今までに味わった事のない味、そして…何より不味い!

「ごほっ! ごほっ! なんだこれは!?」

 咳き込みつつも、俺はラベルを見る。

 随分とレトロな絵だな………

「子供も飲めるビール」

「お前というヤツは………」

 もはやこれ以上何も言う気力も湧かず、俺はがっくりと肩を落とす。もう少しまともな歓迎が出来ないものか。



「オレもこなたに同じ事されたんだ」

 俺から瓶を取るとシンは笑いながら話し始めた。

「そうなのか?」

「ああ。もう1年くらい前になるけどさ」

 懐かしそうな顔をするシン。

 シンが過去の事を思い出す顔は度々見た事がある。

 だがそれはどれも険しいものだった。今の様に笑いながらという事は絶対になかった。



 やはり俺の選択は間違ってなかったのか



「それでお前はその時彼女に何をしたんだ?」

 もはやさっきまでの、変な物を渡された不快感はなかった。

 あるのはシンの楽しい思い出を自分にも、共有させてもらったという事だけだ。

「もちろん、こう、な」

 シンは自身のこめかみに軽く、拳を置き、捩る。

「そん時に閃いたんだ、この技はいけるって」

 そして本当に楽しそうに嬉しそうに、思い出を語る。



 やっぱりお前は―――





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