14
シンが次に連れて来てくれたのは、古い家だった。どうやら何かの店らしい。
「ほら、レイ」
「なんだこれは?」
俺はシンに渡された物体を見ながら尋ねる。
見た目は小さな飴玉の様だが………。
「いいから、いいから口に入れてみろって」
促されるままにそれを口に入れる。
「……んっ!?」
口に飴を含んだ瞬間、それが口の中で弾ける。
いや、比喩ではない。本当に口の中で弾けてるのだ、飴玉が。
「はぁはぁ、シン!」
「引っかかったな!」
口の中の物を無理に飲み込んでから睨み付けるが、シンは悪びれた様子もなく手を叩く。
「子供かお前は」
「悪かったってほら、飲み物」
そして俺は疑う事なく、シンから渡された飲み物を口に入れて
……不思議な味だ、今までに味わった事のない味、そして…何より不味い!
「ごほっ! ごほっ! なんだこれは!?」
咳き込みつつも、俺はラベルを見る。
随分とレトロな絵だな………
「子供も飲めるビール」
「お前というヤツは………」
もはやこれ以上何も言う気力も湧かず、俺はがっくりと肩を落とす。もう少しまともな歓迎が出来ないものか。
「オレもこなたに同じ事されたんだ」
俺から瓶を取るとシンは笑いながら話し始めた。
「そうなのか?」
「ああ。もう1年くらい前になるけどさ」
懐かしそうな顔をするシン。
シンが過去の事を思い出す顔は度々見た事がある。
だがそれはどれも険しいものだった。今の様に笑いながらという事は絶対になかった。
やはり俺の選択は間違ってなかったのか
「それでお前はその時彼女に何をしたんだ?」
もはやさっきまでの、変な物を渡された不快感はなかった。
あるのはシンの楽しい思い出を自分にも、共有させてもらったという事だけだ。
「もちろん、こう、な」
シンは自身のこめかみに軽く、拳を置き、捩る。
「そん時に閃いたんだ、この技はいけるって」
そして本当に楽しそうに嬉しそうに、思い出を語る。
やっぱりお前は―――