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画面に『WIN』の文字が浮かぶ。
『LOST』じゃない『WIN』だ。
「見たか、レイ! これがオレの実力だ!」
オレはレイの背中を少し強めに叩く。
「勘違いするな。コントローラーの利きがこっちは甘かった。それにオレはこのゲームが初めてだったという事を忘れるな。……どうした?」
「あっいや、レイが負け惜しみ言うなんて意外だったから………」
やっぱりレイはオレの知ってるレイとは違うみたいだ。
オレが知ってるレイだったら、淡々と勝ったオレを讃えていただろう。
それなのに目の前にいるレイは、本当に悔しそうにしていた。
「負け惜しみではない、本当の事だ」
「分かった、分かった」
「何がおかしい?」
そりゃこんだけ噛み付いてくるレイなんて滅多にないんだから、おかしくもなる。
こなたが面白がってオレをからかう理由が少し分かった気がする。
「もういい、出るぞ」
笑いを止めないオレに怒ったのか、レイはスタスタと行ってしまう。
完全に拗ねてる。その様子がまた面白い。
元のいた世界ではオレとレイの立場は逆だった。
それがこうなっているという事は、変わったんだなオレは………。
違うな。変わったのはオレだけじゃなくてレイもなんだ
「シン、別のところに行くぞ。もっとこの世界を見て回りたい」
レイの目はあの時とは違って輝きに満ちていた。
あの時のレイが別に暗かったというわけじゃない。ただ時々瞳の奥にオレと同じで、何かを恨む様な感情が見える事があった。
それは多分レイの出生に関する事なんだろう。そして今のレイはその呪縛を解いた気がする。
レイはオレの先をいってる
オレはまだそれから逃れる事も、乗り越える事も出来ていない
やっぱりレイは凄いやつだ。
それが悔しところもあるけど、嬉しい。
「どうした? シン」
中々歩き出そうとしないオレにレイが訝しげな表情で見てくる。
「いや、レイには中々勝てないな、って思ってさ」
「お前にしてはよく出来た皮肉だな」
やっぱり変わったんだな
オレはレイの笑みを混じった言葉に軽く手を上げて返した。