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買い物の途中でちらっと見た人影はあの人だった。
うん、間違いないあの人だ!
でも確か今日あの人は、お姉ちゃんとこなちゃんと秋葉原に行ってるはずなんだけど………。
まっ、いっか。せっかくの機会だもん、声を掛けないと♪
「シンちゃ―――」
わたしは出そうになった声を途中で止める。
それはあの人に近付く人が現れたから。
そしてその人はあの人ととっても親しそうに話してた。
誰だろう………?
遠くからでも髪の艶やかさ、端正な顔立ちなのがわかるくらいに、美人さん。
どういう関係なんだろう? ……まさか、あの人の………!
考えたくない考えがわたしの頭に浮かぶ。
ううん、まだ、そうと決まったわけじゃない
わたしは自分にそう言い聞かると、二人の後をこっそり追った。
「バルサミコス〜」
二人の様子をしばらく観察していると、わたしの考えが当たっていることを思い知らされる。
あの人のとっても、とっても楽しそうな顔。
その顔はわたしたちに見せたことのないもの。
わたしはあの人にあんな楽しそうに心の底からの笑顔にさせることができない。
それなのに金髪の人は、あんな簡単に………。
疑惑が確信に変わる。
あの金髪の人はあの人の彼女さん、そうじゃなくてもわたしたちよりもあの人に近い。
「ラ、ライバル出現どころじゃないよ〜」
わたしなんかじゃ足元に及ばない。お姉ちゃんやこなちゃんやゆきちゃんですら危ないかもしれない。
「一大事だよ〜!」
わたしは使い慣れない携帯を手に、急いでお姉ちゃんに携帯を掛けたの。