「じゃあなかがみ」

「あっ、えっ………」

 B組の教室前で手を上げるあいつ、だけど私は動こうとはしなかった。

 これで最後なんだ、あいつとこうやって話しながら登校するのは

 もちろん私とあいつがこれで二度と会えなくなるとか、そんなんじゃないけど、でもやっぱりこの時間は貴重なん二度とない時間。



「かがみ〜卒業式の日に語り合う友達がクラスにいないの?」

 こなたがいつもみたいに茶々を入れてくる。

 そしてつかさやみゆきまでもが笑顔でこっちを向いている。

 もちろん三人とも私がどうしてこんな態度を取っているか分かっている。

 だから笑っているのだ。

 全く同じ人を好きになったやつはこれだから………



「かがみ話して来いよ、」

 いたずらっ子の様に眩しく笑うあいつ。

 相変わらず人の気持ちなんて読もうとしない。

 私はあんたと少しでも一緒にいたいのよ!



「別に今度卒業旅行みんなで行くんだし、そん時にでも、な」



 柄にもなく優しい声に聞こえたのは、幻聴か、それともあいつがセンチメンタルになっているからか、ともあれ今ので私は充分だ。

 そう、シンとのこの微妙な関係はまだまだ続く。

 そしてライバル達との関係も。

 だったらクラスの皆と思い出を作った方がいい、次に会う時は何年後か分からないし。



「……うん」

「じゃあ期待してるぜ、かがみのダイエット失敗談」

「黙れ!」

 思いっきり叫ぶと180度、体を回転させ、教室へと向かう。



 きっと、当分はこんな関係。





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