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「どうした? 卒業式前に自分の取ったフラグを数えてるのかい?」
そうじろうさんの問いに思わず苦笑する。
娘と同じ、いやこの人がこうだから、娘はああいう風に育ってしまったのだろう。
でもこういう一風変わった家だからこそ、異世界でやってきたオレを簡単に受け入れたんだろう。
「でもさすがにもう寝た方がいい
木の下で誰が来るのかを楽しみにしてさ」
「だからいませんって」
といいつつ、明日白石がやたらと親しげに話し掛けてきたら、と考えてしまったオレはもう充分にこの親子の毒気にやられたといえる。
もっともそれを娘の方に言わせれば、ユル〜クなったことになるらしい。
「じゃあ、そろそろ寝ます」
このまま思い出を夜中ずっと振り返ってるのもいいけど、それでもし体調を崩しでもしたら、あいつらにお節介を焼かれるのは必死だ。
できることなら、あいつらには余計な心配を掛けたくはない。
今までずっと迷惑を掛けてきたんだから
「そうじろうさん」
「ん?」
オレはキッチンを出る前に声を掛ける。
「今までありがとうございました」
オレは今まで1番深く長く頭を下げる。
この世界で出会った尊敬すべき大人に。
顔を上げるとそうじろうさんが、全て分かったような優しい顔でこっちを見ていた。
そして迎える朝。
「おっ」
「おはよ〜」
こなたの部屋を横切る時、偶然にもこなたが姿を表す。
「こりゃ予想外だな」
「卒業式くらいは本気出す」
鼻息荒く、自信満々に答えるこなただけど、別にどうというほどのもんでもない。
とはいえ、これで卒業式の日に遅刻なんてことにはならなそうだ。
「最後でそんなことされてもな」
オレの皮肉に、なぜかこなたは不思議そうな顔で答える。
「なんだ、どうした?」
「えっ、あっ、別に〜」
でもこなたはいつもの見てるだけで気が抜ける顔になると、先に階段を降りっていった。