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 魂があるかなんてオレは知らない。
 死んだ人を再び見たことはあるけど、それはオレのただの気のせいだったかもしれない
 だからオレの家族の魂がオレの側についているか分からない。
 ましてやここは、その人達が死んだ世界とは違うんだから
 でもきっと、届くはずだ。
「よっと」
 寝そべっていた草原でオレは上体だけを起こす。
 それを狙ってたかのように風が吹く。
 いつでも側にいる
 勝手な解釈だけどオレはそう思うことにした。
 だから伝える。
「オレ今日卒業したよ」
 それに始まり
 オレは様々なことを初めて家族に話した。
 いつもオレの言葉を流して、オレを怠け者にさせようとするやつのこと
 いつもオレとケンカばかりして、意地っ張りなやつのこと
 いつもひどいことしてるのに、オレに対して全く怒らない出来過ぎたやつのこと
 いつもおろおろしてて、お人好しすぎるやつのこと
 その他にもいっぱい話した。
 その度に笑って聞いてくれた。
 こんなにいっぱい話したことなんて、なかったから喉が渇いてきた。
「ちょっとごめん」
 オレはそう言って立ち上がると、自販機と財布を同時に探す。
「あれ?」
 だけどなんとどっちも見つからなかった。
「あっ」
 変わりに、何かを見つけた様な人の声が後ろから飛んでくる。
「……何してるんです?」
 振り返るとそこには不機嫌顔が似合う少女がいた。