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「何してるって、随分だなやまと」
 とは言ったものの、まさか死者と話してたとはいえない。
 そんなことを言ったら不審者決定だ。
 だけどそんなオレにツッコミを入れずやまとは着ているスウェットスーツの中から、携帯を取りだし、どこかに掛けた。
「もしもしこう、先輩みつけた?
 ……うん、相変わらず鈍そうな顔してる」
「待ておい!」
 もちろんこれも無視して、やまとはこうに電話を続ける。
「なんだよ、一体何が起こってるんだ?」
 オレのもっともな質問になぜかやまとは大きく眉を上げ、ますます不機嫌顔になっていく。
 まあやまとはオレに対してはいつもこんな反応だけど
「……携帯は?」
「持ってるけど………」
 まるで答えになってないことを聞いてくるやまと。
 しかもオレの答えにわざとらしい大きな溜息を1つ。
「……電源付けてください………」
 もう1回それをしたらキレようと心に決めてた時に、突然やまとがそんなことを言ってくる。
 携帯を取り出すと、なるほど確かに卒業式の時から電源を消したままだった。
 でもなんでやまとがそんなこと知ってるんだ?
 不思議に思いオレは電源を付ける。
「なんだよ!? これ!?」
 付けた瞬間に、メールが50着、着信が20着以上。
 イタズラか? そう思って略歴を調べると、全部知り合いからの。
 なんだ、わけわからん!?
「……先輩、誰かに言ってここに来たんですよね?」
「あっ………」
 やまとのストレートな解説でようやく、意味が繋がる。
 メールを見ると、『気を強く持て』『お前は一人じゃないぜ!』だのが大半だ。
「やっちまったー!」
 オレは頭を抱えてしゃがみ込む。
 卒業式の日に、失踪騒ぎ。
「……どれだけの人に迷惑を掛けたか分かってる?」
「はい」
 年下に説教なんて、普段のオレなら激怒もんだが今回ばっかしはそうはいかない。
 まさしく正論過ぎる。
 この世界で知り合った人達ほぼ全員に心配を掛けてしまったらしい
 曖昧三センチ♪
 その着信音にオレは体を震わせる。
『いや〜祭りを自ら立ち上げるとは、恐れ入ったよ♪』
『よかた、よよかかったた』
『まぎらわしいことするな! 心配はしてないから』
『勝手に想像してしまいました、すみません』
 オレはどの面を下げてあいつらに会えってんだ………?
 どこまでも遠くに行きたい気分だけど、そんなことしたら余計にひどくなって、本当に縁を切られかねない。
 それだけは絶対に嫌だ
「戻るか、ダッシュで」
「……それがいいと思います」
「やまと」
 行こうとするやまとは足を止め、こっちを振り返る。
「お前もオレを心配して探してくれてたのか?」
「……そこまで暇じゃないです。ここにはサイクリングを楽しみに来てて、それで偶然見つけただけ」
 少しの沈黙の後に出たのは、不機嫌にさらに不機嫌を乗せたもの。
 何に怒ってるか、なんてわざわざ聞くことはさすがのオレでもしない。
 それに今は一刻も早く戻らないといけない。
「じゃあなやまと、ありがとな」
 オレはやまとが頷くのを見て、反対の方向にバイクを走らせる。
 場所を空けて待っててくれてるやつらのところに
〜 E n d 〜