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粕日部駅で合流した私達はバスのロータリへ向かったのだが、溢れかえる人で大体のことは予想ができた。
これは今から並んだら、バス二、三台後のになるだろう。
「歩くしかないですね」
「やっぱ早く来て正解だったわ」
雪は家を出た時よりも勢いをまして、ちょっとした吹雪みたいになっていた。
はっきりいってこんな中を歩きたくないけど、それでも試験を受けられなくなるよりはまだましだ。
覚悟を決めて誰もいない、真っ白な場所に飛び込む私………。
いや、ちょっと前に黒い人影が………
「シンさん!?」
慌てて駆け寄っていくみゆき、ちなみにあいつは傘もさしていない
やっぱり、すっごく機嫌が悪い
最初のうちは普通だったんだけど、電車の中で雪を見てるうちに顔がどんどん険しくなっていった。
会ったばかりの私とあいつだったら、きっとすっごい言い合いになっていただろう。
でも今は違う
私はあいつがどうしてあんな顔をするのか理由を知っている
「シン、傘」
振り返るあいつの顔は、いつもよりも冷たく、怖い
でも知ってる
あいつは私達を傷つけないようにしようとしてる
だったら畏れることは何もない
私はあいつの手から傘をひったくるように取って開けると、柄をあいつに突きつけてやる。
「全員合格、するんでしょ?」
視線とも火花とも取れるものが、私とあいつの間でぶつかる。
「当たり前だ」
今度は私からひったくるように傘を取ると、あいつはすたすたと歩いていく。
「さすがですね」
みゆきの言葉に肩をすかして答え、私とみゆきは前方で開いてる傘の後を追った。