「お姉ちゃん、お待たせ〜」

 今日は私よりも先に起きていたつかさが台所から、包みを三つ持って顔を出す。

 その顔は眠そうには見えない、それどころか試験を受ける私よりも興奮している。



「これがお姉ちゃんの分、これがゆきちゃん、でこれが…シンちゃん」

「ありがと、これできっと全員満点だわ」

 私の軽口につかさは恥ずかしそうに笑う。

 満点はさすがに言い過ぎかも知れないけど、つかさの気持ちが込もった弁当を無駄にしたら、承知しない

 もちろん、それは私も含めて



「……大丈夫かな、シンちゃん」

 窓の方に視線を移し呟くつかさ。

 窓の外はさっきよりは明るくなっているものの、相変わらず雪がしんしんと降っている。

 私も何も言わずに雪を見る。



 考えていることはつかさ、いや皆一緒のはず。

 人というのは恋をすると、思考が似通ってくるらしい。

 朝起きて、みゆきが私と同じ心配事をメールにしてきたのは不謹慎ながらさすがに笑ってしまった。

 想いだけなら勝っているとは勝手に思ってるだけで、実際は差がない。

 私もみゆきもつかさもこなたも、あいつの雪が苦手な訳を知ってる。

 それは過去の出来事。あいつの中では忘れられない出来事。



 もし私一人だったらそんな大きすぎる傷に対して、立ち尽くすだけだったかもしれない。

 でも私は一人じゃない。

 同じ人のことを想い、悩む、親友という名のライバルがいてくれてる。



 それにあいつは前に進んでいる。例えそれが少しであっても

 そしてあいつが前を見てる限り、私達はあいつを放り投げることなんてできない



「大丈夫よ」

 私とつかさの視線が合わさる。



「大丈夫」

 私の言葉につかさは小さくだけどはっきりと頷いた。





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