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『シン君』
『なんですか〜? そんな真剣な顔しちゃって〜?』
「ねぇシンちゃん少し変じゃない?」
『ドジりぼん』が言ったように、画面に映るシンはいつもの無愛想な顔とは違い、不自然なくらいに陽気だった。
「た、多分、諜報員が話を聞きやすくしようと、シンにお酒を飲ませたんじゃないかな?
わたしが帰ってきたら酒瓶が転がってたし………」
「未成年に酒を飲ますなよ………」
『konakona』が汗をたらしながらの解説に、『ツインテ』がジト目でツッコミを入れる。
もっともシンが元々いた世界の国ではシンは成人なのだが、今の世界で暮らしている国お酒は二十歳を越えてからだ。
未成人はマネをしないように。
さて、話を戻すと、諜報員『カモン・マイロード』が話を進めていた。
『君がここ来て、もう一年以上経つね』
『ああ…言われてみたら、もうそんなになるんですね………』
今まで陽気だったシンがそこで寂しげに笑う。それを見る四人の少女達はそんなシンの顔を見て胸を痛める。
だが少女達の思いを余所にビデオは続いていく。
『そんな中で君はこなたやその友人と知り合いになった』
『……ハイ、アイツらと会えて本当に良かったと思ってます』
『そうか…しかも周りが可愛い女の子ばっかしだしな……』
『は、はぁ………』
『なんだその気のない返事は!? 君は自分がどれだけ素晴らしい環境に身を置いてるか分かってないのか!?』
「あのー『konakona』さん、『カモン・マイロード』さんも………」
「うん飲んでるね………
この状態になったら長いんだよね〜」
「『konakona』早送り」
「ラジャー」
オヤジの居酒屋トークに皆興味はないらしく、『ツインテ』の提案に誰も異論を挟むものはおらず、諜報員の動きが速くなる。
諜報員『カモン・マイロード』が今回の主題に戻ってきたのは、ビデオの時間表示が百分を越えようとしてるところだった。
『――じゃあ、こなたとつかさちゃん、かがみちゃん、みゆきちゃんが崖から落ちそうになったら誰から助ける?』
『そうですね………』
シンはコップに注がれた液体を見ながら考える。
その口から出る名前を聞き漏らすまいと少女達は食い入るように画面を見つめる。