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「アスカちゃん、捕まったって」
バックに帰ってきたシンに掛けられた一報はそれだった。
「ゆい姉さんからの知らせだから、ソースはガチ!」
こなたがお得意の親指を上に出すポーズで告げる。
持つべき者は国家権力の親族である。
「そうか、雰囲気が変わったからもしかしてって思ったんだけどな」
「え〜!?」
完全に国民的バトル漫画張りのシンの発言に思わずたじろくこなた、そして同時になぜ日常的な空気は読めないのかとも思う。
まあそれが分かってしまったらチートである。
シンはあくまでチート『もどき』が限界である。
「もう大丈夫みたいですよ、店長も確認してきましたし」
「はぁ、やれやれね」
シンからの報にかがみは大きく息を吐き、みゆきも胸に手を重ねる。
ただつかさだけは未だに眉を潜めていた。
「つかささんどうしました?」
不安になるシンは思わずつかさをのぞき込む。
つかさは怖がりなところがある分、まだ恐怖が残っているのかもしれない。
そう思ったシンだったが、つかさの顔が真っ青にはなっていないことに気付く。
それは何か考え事をしているかのような顔だった。
「あの〜ラングレーさん」
「はい、なんでしょう?」
「ラングレーさんは、シンちゃんですか?」
「ば、ば、ば………」
完全に不意を突かれシンは口以外の全てが固まる。
「バ、バカ言うなよつかさ、そ、そ、そんなわけないだろ」
ようやく出た言葉も声もシン・アスカ、そのもの。
逆境には強いが、パニックには弱い男、シン・アスカ。
シンは慌てて口を押さえるがもう遅い。
そしてかがみ、みゆきの方を恐る恐る見やる。
向けられるのは、侮蔑か嘲笑か。