「へーみゆきさんって医者を目指してるんですか!」

「はい、まあ、その………」

「でも実は医者が苦手だったりとか?」

「えっ、そんなことは……歯医者がちょっと苦手でして」

「分かります、あのドリルとか」



 大げさに手を回すシンを見て、少女達は強ばっているもののようやく微笑む。

 ようやくかと、シンは心の中で安堵と疲れの溜息を出す。

 ここまで来るのにどれだけの話を振ったことか、どんなに話しても浮かない表情の少女達。

 それは全く無理のない話ではあるのだが、シンは自責の念にかられていた。

 きっとこなただったら三人の不安をもっと早く取り払えるのに、そういう思いが拭えなかった。

 心を閉ざしていた時、この四人の少女達に救われた。

 だからこそシンはこの少女達の力になりたかった。

 だが今とてもじゃないがシンが、少女達の心の支えになれているとは思えなかった。

 ならば正体を明かせば、少なくとも少女達はシンの『力』を知っているし、安心感はかなり増すであろう。

 だがそれでこの場を納めれたとしても、その次に迎えるのは関係の破綻、

それを考えるとシンは正体を明かすのを思いとどまってしまう。

 全てを捨てても守る

 信念にはしているが、いざ実行するとなると難しい。



「すみません」

「えっ?」

「気を遣って頂いて、ラングレーさんのお気持ちとても嬉しく思います

 こんな状況でなければ、もっと楽しい時間を過ごせたと思うのですが」

「い、いえ、そんな………」

「ううん、あなたがいるからだいぶマシ、ありがとう」

 みゆきに続いて、かがみもシンに笑いかけてくる。

 本心かどうか、それは心の中を見れない限り分からない。

 ただ二人の笑顔はシンがいつも見ているものだった。

 それだけでシンは救われた気がした。



 いや救われているのだ。





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