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「取りあえずみんなでお客さんの動揺を抑えて、ドリンクとメニューの一つくらいはサービスしてもいいでしょ
大丈夫、大丈夫滅多に強盗なんて来ないから〜」
シンがバックに戻るとこなたが他の店員に指示を出していた。
その様子は強盗が来るかもしれないというパニック状態、というよりはピーク時におけるバックという感じである。
「……こなた」
「ほらほらアスカちゃん仕事仕事、あっ、このホットケーキ、わたしからってことでつかさ達に持って行って」
「お、おう………」
「アスカちゃん、言葉がはしたないよ〜」
「ああ、は、はい、すみませんこなたお姉様」
シンが拍子抜けするほどに、こなたはいつも通りにシンをからかってくる。まるで何事も無いかのように。
だがそれはシンにとって喜ばしいことでもあった。
もしこなたもつかさ達と同じく恐怖におののいていたら、シンは身動きがとれなくなっていただろう。
こなた、つかさ、かがみ、みゆき、優先順位なんか付けられない、新しい世界でできたシンの大切な人達。
「こなた」
「アスカちゃん、まだいたの?」
「今は側にいれないけど、もし………、もし、何かあったら、絶対に呼べよ」
『アスカ・ラングレー』ではなく完全に『シン・アスカ』として、こなたに告げる。
その顔は優しいというものとはほど遠く、怖いという形容の方がぴったりときた。
「おk、そん時はスーパーエースに期待させてもらうよ〜」
しかしこなたは怯えるそぶりすら全く見せずに、ゆる〜い顔をシンに返す。
その顔を見たシンの顔から強張りが取れる。
それは癒された、というよりは自分だけシリアスをしてるのが馬鹿らしく思えたからなのであるが。
だがこれでシンはつかさ達にはさっきと同じ様に接することができるだろう。
「では行ってまいります」
「はーい、お願い」
任せたよ、シン
店内に戻るシンの背中に、こなたは親友兼恋敵を託した。